第11話

鍵を開けて家に入る。彼女がいつもいるベランダに向かう。歌を歌うときの彼女の場所。



白いワンピースを靡かせながら歌う彼女がそこにいた。昨日までと変わらない彼女。



邪魔しないように近づく。そしてソファに座る。彼女の歌を聴くときの僕の特等席。歌い終わったタイミングで声をかける。



「消えたんじゃなかったの」



なんて声をかけていいのか分からず言い方がきつくなってしまった。僕の声に反応するように勢いよく彼女が振り返る。その顔には戸惑い、驚き、安堵が見えた気がした。



そんな表情もすぐなくなりいつも通りの表情になる。そして目で訴えかけるんだ、僕に。"どうして?"と言わんばかりに。



「朝、姿が見えなかったから"また"消えちゃったのかと思った」



素直にいえば彼女は数秒悩んだ後、窓の外を指さした。

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