第11話

1日が終わって帰れば必ず律がいる。起きていて"おかえり"って私を見てちゃんと言ってくれる。彼は優しいから。人の表情や感情に敏感だから。私が零したものは必ず拾う人だから。



彼が居るあの場所が今の私の帰るところ。彼がいるから私はまだ大丈夫。まだ笑える。ちゃんと私でいられる。



だけどもう限界だったんだ。ずっと繰り返される月に1回のあの日。どんどん汚れてく身体。いつの間にか心も汚れかけていて、綺麗な律が眩しくて、この人に縋りたいと思ってしまうほどにきっと辛かったんだ。



だから帰って彼を見た時笑えなかったんだ。いつもの私で居ることが出来なかった。今まで我慢していたものが堰を切ったように溢れ出して雫となって落ちる。そんな私を見てすぐ駆けつける彼は戸惑っていた。迷惑かけたくないのに、心配かけたくないのに、彼はここからいなくなる人だから、私の前からいなくなる人だから。



これからも私はあの人に縋るしかないから、明日からまた頑張るから、今日だけだから…。



「おねがい、抱きしめて…」



私のわがままを聞いて…。




《凪side end》

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