第10話

清水さんに会って帰ってきたとき、寝てると思ってたのに律は起きていて、いつもと変わらない顔で、声で言うの。



「おかえり」



って、その言葉を聞いて嬉しくなったの。それと同時に悲しくもなった。だってもう私にその言葉をかけてくれる人はいなくて大好きな大切な人はもう居ないから。



清水さんは私を育ててくれた人だけど私に"おかえり"って声をかけてくれたことはなかった。ただただ月に1回のあの1日を繰り返すだけ。



律の隣にいたい、そう思えば思うほど苦しくなってこんな汚い私が何思ってんだって思うけど、それでもこの綺麗な人はこんな汚い私にも手を差し伸べてくれる人だから。手を離したくないって思ってしまうの。



だからあの1日はずっと律のことを考えて過ごす。そうすればもう何も怖くない。私の心まで汚されてたまるか。

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