サクラが咲いたら君に会いたい

@x_x2008

第1話 Internet

見ていたアニメが終わった。

私はそれだけで生に対するやる気を失う。趣味もない、恋人はもちろん友達もいない。刺激の何も無いこの生活で唯一感情が動くのはアニメを見ている時間だけだった。アニメの登場人物を通して感じるガラス越しの感情は、私が感じるリアルな感情よりもよっぽど生を実感させてくれた。

やる気を失った私は先程から布団の上でツイッターをみてはユーチューブを開くことを繰り返している。しかしそれにも飽き、空腹も感じた私は布団から出ようと試みる。起き上がった直後に3秒ほど感じる頭痛を想像し、ゆっくりと体を起こした。

頭がガンガンする。朝から最悪の気分だ。朝…?いや、昼か。時計をみるともう14時だった。リビングに行き、机の上に置いてあった食べかけのメロンパンを口に含んだ。湿気を含んでしなしなになったメロンパンが舌の上でじんわりと溶けていく。甘さが脳に染みわたる。少しだけやる気が出て、今日をどうやり過ごすか考えてみる。

窓の外から鳥のさえずりが聞こえてきた。秋晴れのなんとも気持ちの良い午後である。久しぶりに外に出てみたいという気持ちになったが、風呂に入ることを想像して諦めた。生にも死にも執着はないが人の視線にだけは執着というか恐怖心がある。近所を散歩するにも、風呂に入り、メイクをして、マスクをつけて自分ができる最大限の「普通の人間」になってようやく外に出ることができる。そんな面倒くさいことを今の私にはできない。家で何をするか考えたが、家ですることなど特にない。

高2で不登校になって半年になる。毎日同じようなつまらない生活を繰り返すことへの虚しさにはもう慣れた。ただ人と話していないため、時々無性に寂しさが襲ってくる。実家住みではあるが、親と話せば口論になるためもうしばらなく口を利いていない。

私はHAPPYという匿名通話アプリを開いた。不登校になった時からこのアプリをほとんど毎日開いている気がする。嫌いな人はブロックして好きな人とだけ喋ればいいインターネットの世界はとても楽だし安心できた。私は「暇」というスレッドを立てて誰か来るのを待った。

中瀬「こんにちはー」

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