第3話
性欲を感じれば死ぬ。
鬼月さんはハッキリとは言わなかったが、僕がこの先行き着く結末だ。
不安で押しつぶされそうな夜を超え、朝日はいとも通り登った。
僕は鬼月さんと共に過酷な通学路を通って登校する。
これからこの過酷な通学路をいつまで通るのか、いや、割と案外すぐに終わるのではないか……。
などと思考をめぐらせながら、あの手この手で死への恐怖を遠退けた。
学校に到着すると自分の教室、自分の席へ着くが、昨日の夕方に南棟三階の空き教室でモンスターが暴れたなどという話題は一切上がってはいなかった。
クラスメイトも教師陣も何事もなく一日を始めている。
「うーっす、瑛太」
「なんだ亮平か」
自席の前へ豪快に座ってきたのは数少ない友人である中崎亮平だった。
こちらの気を知る由もない亮平は間抜けだが面のいい爽やかな笑顔を向けてくる。
「なんか顔を死んでないか? ちゃんと飯は食えよ?」
「余計なお世話だ」
亮平は鼻で笑うと椅子を後ろに傾けながらスマホをいじり出した。
「なぁ、歩く女子生徒図鑑こと中崎亮平どのに聞きたいんだけどさ」
「人聞きが悪すぎるな」
「鬼月楓彩って名前に聞き覚えは?」
「あー、一年の子だろ? 片腕が無い子だって少し話題になったな」
ちゃんと記憶している辺り、僕が咄嗟に付けた肩書は当てはまっているらしい。
だが、鬼月さんの特徴から少なからず話題になったり誰かの印象に残るのは必然なのかもしれない。
「なんか、彼女のことについて情報は無いか? 片腕が無いこと以外で」
「情報か……ここ一ヶ月だと、男子陸上部の先輩より足が速いとか、なんか常にバットケース持ち歩いてるとか、そんなもんか」
「さすが歩く女子生徒ずか……」
「それやめろや」
亮平のツッコミを最後に教室のドアが開き、会話が断たれる。
白衣を纏った担任教師は眠そうに大あくびをしながら教卓につくと、朝のHRを始めた。
教師の口からも南棟三階の空き教室の話は出てこなかった。
それよりもクラスの中で欠席者が続出している事の方が特出すべき話題だろう。
だが、それも「風邪には気をつけろ」の一言で片付けられ、違和感を違和感として扱わなかった。
「なぁ、瑛太?」
亮平は世間話をするテンションで振り返ってくる。
教師の視線がすぐに亮平の後頭部に刺さったが、なにか注意をする訳でもなくて連絡事項を続けた。
「おまえ、美川先輩とはどうなったんだ? 昨日会ったんだろ?」
「……」
不意に夕日に染る空き教室の惨状が頭の中でコマ送りされた。
今でも美川先輩が蜘蛛の怪物に変貌を遂げた瞬間を思い出すと胃のあたりが痛くなる。
「いや、ただ話をしただけ。お前の方こそ、カナメとはどうなんだ?」
「……分かるだろ? 何も進展なんかねぇよ」
お返しという訳では無いが、少し亮平を揶揄った。
思いのほかつまらない反応をされたのでこの会話もこれっきりに、亮平は前を向いた。
学校に来れば少し気が楽だった。
自分の中に巣くうタマホウシや鬼月さんの事情、これから襲ってくるであろうタマホウシ……そんなことを考えるよりは期末テストについて考えている方が幾らか楽だ。
だが、学校でも鬼月さんに縛られていることがあった。
◇
話は十二時間前、鬼月邸の夜に遡る。
「上ヶ丘さんにはこれから二つのことを守っていただきます」
鬼月さんは僕の目をまっすぐ見つめて二本指を立てた。
「名付けて、性欲を感じない安全生活二箇条、ですね!」
「な、名付ける必要ある?」
「まず第一」
「聞けよ」
「なるべく女子と二人きりにならないようにしてください」
「今の状況はどうなるんだ?」
「第二に!」
「聞けよ」
「なるべく一人にならないでください。出来れば、性的対象にならないご友人や家族と常に一緒にいることを心がけてください。その、いらっしゃいますか? お友達……」
「心配が失礼なんだよな」
無理矢理押し付けられた二箇条に色々な質問をする暇もなく、鬼月さんはこれからの生活の説明を展開し続けた。
「あと、その他の衣食住はこちらにお任せください! これからはお弁当、お作りしますね」
「あはは……アリトザイマス」
◇
現在に戻り、午前の授業も終わり昼休みに入っていた。
いつも通りなら何も考えることのない空虚な時間なのだが、今日だけは心の片隅で鬼月さんの手料理を少しだけ楽しみにしていた。
鬼月さんが片腕の身でどのように料理をしたのか気になるところではあるが、料理を完成させたという事実から、かなり手先が器用なことが伺える。
「ういーー、ただいまぁ!」
購買部から帰ってきた亮平は僕の机に戦利品の菓子パンを並べた。
「瑛太は弁当か?」
「そうなんだけど……」
僕は菓子パンたちを前に自分の昼食を置いた。
小豆色の布を解くと、中から一つのタッパーが姿を現す。
「なぁ、亮平」
「ん、ん?」
「これさ、大丈夫だよな」
「い、いや大丈夫だろ」
タッパーから溢れ出る邪悪な気配に、クラス中の視線が僕の机へと向かった。
何回か開けるのを躊躇ったが、鬼月さんの顔がそのたびに脳裏を過り、僕には弁当を開けないという非道な選択はできなかった。
「あ、開けるぞ」
「お、おう、ゆっくりな、ゆっくり開けろよ、瑛太」
ゆっくり、爆弾扱うような緊張感を持ちながらタッパーのフタを取ると、現れたのは得体の知れない黒い物体だった。
一見して黒いゼリーの様に見えたが、よく見ると焦げ付いており、イカ墨よりも深い黒で、光を一切反射していない。どの特徴をとっても僕の知る料理の特徴には該当しなかった。
「こ、これは……」
「な、なんだろう……これ」
付属していたスプーンで軽く触るとプリンのような弾力を確認できた。
醜悪、不細工、不快……。
隻腕というハンデがあることから多少の遜色は許容するつもりだった。
むしろ、僕のために弁当を作ってくれたことに感激したかった。
撤回する。
何をどうしたらこうなる。
「ま、まさか食う気か?」
僕の正気を疑う亮平だったが、今日ばかりは食べないわけにはいかないのだ。
鬼月さんが初日ということで気合を入れてこの暗黒物質を作ってくれたのだから。
「い、いただきますっ!」
僕はひと呼吸を置いてから勢いに任せてスプーンで掬った暗黒物質を口の中にねじ込んだ。
「―――」
宇宙が、宇宙が僕の体の中に流れ込んできた。
苦みでも辛味でもない。
単なる刺激が僕の味覚と嗅覚を刺し貫き、全身の神経が波打つのを感じると、視界がブラックアウトした。
◇
「……知らない天井だ」
いや、よく見れば保健室の天井だ。
どれほど眠っていたのか分からない。
後頭部を思いきり殴られたような感覚を最後に記憶が飛んでいる。
上体を起こし、僕を囲っているカーテンを開いて保健室の先生に挨拶をしようとしたが、この部屋には僕以外誰もいなかった。
保健室の外では既にサッカー部が練習を始めており、午後を丸々寝て過ごしていたらしい。
憂鬱な気分になると同時に、嫌な予感が腹の奥で脈打つのを感じた。
「僕……一人か」
サッカー部員たちの声が遠のいていく。
自分の心音に紛れて一歩、また一歩と保健室の外を歩く足音が鼓膜を揺らした。
鬼月さんの脅し文句が頭の中で何度も響く。
今、ここでタマホウシが襲ってきたら……。
「一人じゃないぞー」
「うお! びっくりしたぁ!」
僕が慌てふためいて壁に背中を打ち付ける姿を、黒髪のハーフロング女子はクスクスと嗤っていた。
「上ヶ丘くん、慌てすぎー」
「さ、
いつでもカーディガンを緩く着こなしており、眠たげな目付きとは裏腹に男子を蠱惑するような態度で一部の男子からは熱烈な人気がある女子だ。
「うーん……いうて朝のHRからだよー? 午後からはちゃんと授業に出るってー」
「もう放課後です」
「……」
「……」
里美沢は笑顔のままベッドの脇に置いてあったカバンを持ち上げた。
「んじゃ帰ろっかー」
里美沢のペースに苦笑いをしていると、不意に手を握られる。
「一緒に帰ろうよ」
普段なら断る理由は無い。だが、今は鬼月さんの言いつけを守った方が身のためであるのも確かだった。一人きりではないにしろ、里美沢レベルの美人と二人きりになるのは恐らくマズい状況だ。
「ごめん、先約があるからさ、今日は遠慮しておくよ」
「先約?」
「うん」
里美沢は一瞬だけ目を丸くすると、すぐにいつもの見透かしたような笑みを浮かべて踵を返した。
「そー? じゃあ、また今度ねー」
里美沢は自由気ままな猫のように保健室から出ていった。
僕も自分の荷物を教室へ回収しに行くとともに、鬼月さんを探さなければならないため、少し間を空けて保健室を後にする。
昨日と違い、放課後の校舎内は部活動に勤しむ生徒たちで賑わっており、教室に向かうまでの間に数人の吹奏楽部とすれ違った。
一人ではないという安心感からか、僕は鬼月さんのお弁当をどうやって処理しようか考え始めた。
あの後、誰かが代わりに食べてくれたとも考えずらい。
でも、食べないと失礼だよなぁ。
などと思考を悩んでいると、放課後の賑わいとは別の、忙しい音が僕に近づいて来ているのに気が付いた。
放課後とは言え、暴走的に廊下を走るのは大変危険な――
「――見」
「――み?」
「つけたぁぁぁ!」
突然のドロップキック。
僕の肩のあたりまで跳躍した女子生徒は躊躇うことなく僕の胸へ目掛けて両足を突き出してきた。
反応すらできなかった。
ノーガードでドロップキックを受けた僕の体は廊下に倒れ込み、痛みに悶えていると女子生徒はすぐに立ち上がって駆け寄ってきた。
勢いをそのままに僕の上で馬乗りになり、胸ぐらを掴んでくる。
茶髪をポニーテールにまとめた勝気な印象の女子だ。
制服の上にジャージを羽織る姿から連想できるのはスポーツ女子という印象だった。
「この……変態野郎! マジでどういうつもりっすか!」
「待て待て待て!」
右こぶしを振り上げる女子に対して、両腕で防御姿勢を取った。
「臨さん?」
と、横からの声で女子生徒の動きが止まった。
「と、上ヶ丘さん……何をしているんですか? こんな廊下の真ん中で」
取っ組み合っている僕らを見下ろしていたのはバットケースを担いだ鬼月さんだった。
「鬼月さん、助けて!」「楓彩さん、助けて!」
同時に鬼月さんの名前を呼んだ僕と女子生徒は一瞬睨み合い、互いに鬼月さんへ助けを求める視線を向ける。
いや、お前が助けを求めるのは違うだろ……と言いたかったが、女子生徒のほうが口が早かった。
「聞いてよ! 楓彩さん! こいつ昨日わたしに抱きついて来たんすよ! 訳の分からないこと言って、急に!」
「え……上ヶ丘さん……本当ですか?」
鬼月さんの冷ややかな視線が突き刺さってくるが、僕は勢いよく首を横に振って否定した。
「あ、そーでした、昨日は先輩女子とイチャついてましたもんね」
「間違ってないけど言い方! ほら見てよ! この子もう俺の事を変態としか見れなくなってる」
まるで汚物を見るような女子生徒の隙を突き、両肩を押して馬乗り状態から逃れる。
「ま、まぁ、そう言うわけだからさ、絶対人違いだと思うよ?」
「でも、抱きしめた後、普通に名乗ってったっすよ? 上ヶ丘瑛太って!」
女子生徒は口を尖らせて鬼月さんへ抗議した。
「んで、ありがとうって……キモ過ぎっすよ!」
「まぁ落ち着いてください臨さん。上ヶ丘さんの味方をするわけではありませんが、今の状況に限っては上ヶ丘さんが犯人ではありません」
「そんな! 楓彩さん!」
鬼月さんはごく冷静に弁解してくれた。あとは僕の味方だったなら完璧だった。
対する女子生徒は不服そうに鬼月さんへ距離を詰めたが、鬼月さんも困り笑顔を浮かべるしかなく、何とも気まずい空気が流れてしまう。
「……いやだって……されたし……」
女子生徒は今にも泣きそうな目で僕を睨みつけてきた。
今泣かれたら僕が悪者にされる気がする。
「えっと、場所を変えない? ここだと色んな人の迷惑になるし」
先ほどから僕らの揉め事を遠くから見ている吹奏楽部がちらちらと視界に入っていた。
◇
僕と鬼月さん、女子生徒は人目を避けるために別棟の教室へと移動した。
授業用のパソコンが並べられている教室であり、部活で使うことも無ければ、今の時代調べものがあればスマホで事足りるため、放課後に好んでこの教室を訪れる生徒は少ない。
「で、そもそも君は誰なんだい?」
「……」
ポニーテールの女子生徒はにらみつけるだけで自己紹介をする気配は無かった。
「彼女は
「ちょっと楓彩さん! 言い過ぎっす! 名前だけで良かったでしょ!」
磯崎さんは慌てて鬼月さんの両肩を掴んで振った。
「コホン、磯崎っす。昨日の事なんすけど、放課後に少し探し物をして校舎内をウロウロしてたら急に……先輩が抱き着いてきて……」
もし、磯崎さんの言っていることが本当だったならかなりのトラウマになるだろう。常人だったら反撃しようなんて思わないが、出会い頭のドロップキックが彼女の人間性を現している。
「まぁ、犯人は捜すとして、磯崎さんに心当たりのある人物とかは……まぁ僕だよね。そう言ってますもんね」
僕は鬼月さんの手を取って磯崎さんから少し離れた。
「もしかしてさ、これって例のタマホウシが関係してるとか無い?」
「実はその可能性を考えていました」
途端に腹の辺りが重く苦しくなるのを感じるのとは裏腹に、鬼月さんは何故か少し楽しそうな口調だった。
「
「じゃ、じゃあ」
「しかし、妙です……」
一変して難しい顔をする鬼月さん。
「妙?」
「はい、早すぎるんです。放課後に襲われたのであれば、上ヶ丘さんは美川明日実と接触した前か後です。寄生された直後でしたら、誤差は一時間前後ですし……」
「それもそうか……」
「いずれにしても、臨さんを少し調べる必要がありますね。タマホウシと接触したのであれば上ヶ丘さんの二の舞です」
「それは大変だ」
僕と鬼月さんが同時に磯崎さんへ振り向くと、何かを嫌な予感を察知したたしく、顔を引きつらせた。
「な、なんすか……二人してコソコソと」
「臨さん、抱きつかれた時の事、詳しくお聞かせいただけないでしょうか」
「え、まぁ……うす」
僕は磯崎さんに対して鬼月さんを挟む位置に移動し、椅子に腰かけた。
「昨日、夕方の五時くらい……だったかな。二階の理科室前を歩いてたんすけど、そこで急に背後から声を掛けられて、抱きつかれたって感じっす。……誰? って聞いたら上ヶ丘瑛太って名乗って、他の質問をする前に走ってどっかに行ったっす」
聞けば聞くほど怪談話だ。
鬼月さんが恐らく考えているであろう時間の問題。夕方の五時であれば既に、鬼月さんの家へ向かっている時間だろう。
「気の毒に……」
他人行儀な僕に対して磯崎さんは敏感に睨みを聞かせてくる。
「はぁ、もういいっす。一発入れられたんでそれで。時間ももったいないし」
僕としては良くない。何も悪いことをしていないのに、なぜ性欲を奪われ、胸にドロップキックを見舞われなければならないのか。
僕が辟易としていると磯崎さんは不機嫌そうに教室の出口へと向かった。
「臨さん? どちらへ?」
「少し探し物をしてからバイトっす」
「まだ探し物は見つかってなかったんですね」
鬼月さんは表情明るく僕へ視線を寄越した。
意図は分からないが、恐らくは恩を売っとけ、と言いたいのかもしれない。
「な、何を探してるの?」
僕の優しさにブレることなく、磯崎さんは鋭い一瞥を寄越した後、答えた。
「猫っす。黒猫」
「黒猫? 校舎内で?」
「楓彩さんたちも見つけたら教えて欲しいっす。割とデカい猫なんで見たら分かると思うっす。あ、それと、見かけても絶対に近づかないでほしいっす」
「そんな危険生物を学校に連れてくんなよ……」
「別に連れてきたわけじゃないっすけど……」
ふと、鬼月さんが僕らの会話から外れて窓の外を眺めているのに気が付く。
「鬼月さん? どうかした?」
「臨さんが言っている猫ってあれの事ですか?」
鬼月さんが指さした先には確かに黒猫がいた。
いや、黒猫と呼ぶには些か……。
「デカすぎじゃね?」
もはや猛獣という肩書が似合い過ぎるほどの巨躯であった。
動物園か教育番組のサバンナ特集でしか見たことのないサイズに、興味と恐怖を半々で抱きながら注視する。
「あ! いた!」
僕と鬼月さんがギョッとしているのをよそに、磯崎さんは興奮気味に建物から飛び出していった。
「……鬼月さん、もしかしてあれも……」
嫌な予感が現実かどうか鬼月さんに聞こうとした時にはすでに、鬼月さんの目は座っており持っていたバットケースを太ももに挟んで例の日本刀を抜き出していた。
「臨さんが危ない」
誰よりも早く緊張感を纏った鬼月さんは外へ向かう磯崎さんを追いかけて走り出した。
教室の中で一人になった僕は逸る鼓動を感じながらも、女子生徒二人が危険な目に遭っているのに自分だけ保身に走れないという我ながら愚かな理由で追いかけ始める。
建物から出た瞬間、僕の視界に移ったのは黒い猛獣の足元で横たわる磯崎さんと思しき女子生徒の姿と、僕の眼前に迫る鬼月さんの足だった。
本日二度目の、上履きの裏側の光景。
「上ヶ丘さん! 邪魔です!」
強烈な後ろ蹴りで僕の体は大きく吹き飛ばされ、再び校舎内に戻される。
瞬間的に肺が圧迫され呼吸困難に陥るが、涙で視界を滲ませながらも黒い猛獣と押し合っている鬼月さんの背中を捉えた。
「おにつ……ゲホっ!」
自分の何倍もの体格差をものともせず、鬼月さんは猛獣の両前足と上顎を押し返していた。
猛獣の上顎から伸びた八重歯が鬼月さんの左肩に突き刺さっており、鮮血が床を濡らしている。
「上ヶ丘さんは建物の中に入っていてください!」
と言われたものの、鬼月さんの蹴りが痛すぎて動けそうに無かった。
蹴られた胸を抑えて酸素を口から取り込むので精一杯だ。
僕が悶えている内に鬼月さんと猛獣は刀と爪を何度もぶつけ合い、そのたびに建物と僕の内臓が揺すられる。
「……あ……」
ただの蹴りを一発貰っただけなのに、視界は狭まり、周囲の騒音が徐々に小さくなっていく。恐怖というよりは呆れが僕の感情を占めていた。
また鬼月さんに気絶させられるのか……。
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