1
腰の辺りからすっぽりと下半身を覆う薄い布団が、
目を閉じてても、横向きにして頭を載せてる枕の下に手を入れようと動かした
手の動きに合わせてシュッと小さな音がして、シーツの
汗で湿っていた体が少しずつ乾いていくのを感じる。
だけどそれは決してシーツに汗が吸い取られてる訳じゃない。
ラブホテルのシーツに吸収性は
ゴォゴォと、今にも壊れるんじゃないかって思うような音を立てる空調。
その空調音に混じって、
「俺、明日早いから帰るけど、
掛けられた声に閉じてた瞼を開いてみれば、彼――
普段はムースできちんとセットされてる彌の前髪が今は顔に掛かり、その前髪の隙間から覗く黒い瞳がわたしの耳元辺りを捉えてる。
彌の手が、留め終わったボタンから結ばず首に掛けられていたネクタイに伸びる。
その一連の動作を見ていたわたしは、倦怠感を追い払うように、「ふぅ」と小さく溜息を吐いた。
「わたしも帰る」
「いいのか?」
「うん。急いでるなら先に出ていいよ」
肘を突いて体を起こすと、ベッドが
「いや、待ってるよ」
彌の声を背中で聞きながら、わたしは着替える為にバスルームに向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。