P.53

『大人になったら』と彼女は言ったから、


俺は早く大人になりたくて、


でも、大人って何だろう?って考えて、


わからないけど、とにかく美波に早く近づきたくて、


高校卒業したら就職しようかと、高校に入ったばかりの時は思っていた。



でも、それじゃ近付けない気がした。


美波との差は埋まらない気がした。



だから、頑張って勉強して、大学に行くことにした。


美波と同じ、‘大卒’で、就職しようと。



そして、今度は美波よりも上の大学を志望した。



美波と俺の差は、なくならない。


だから、美波と同じにしてもダメだと思ったんだ。



常に美波を追わなくちゃいけない俺は、一つくらい追い越さなくちゃいけないと思った。



そして、志望校の条件がもう一つ。



ここが一番重要で、どうしても譲れないところ。



それは、‘美波のいる場所であること’。




頑張ったんだよ、俺。


中学の時に負けないくらい、頑張って勉強したんだよ。




なぁ、美波、もうそろそろいいだろ?

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