P.52

美波と会ったのは、地元へ帰る前の一度だけ。



普通にファミレスでご飯を食べて、喋っただけ。


気持ちを伝えてしまいたかったけれど、そこで言ったところで返ってくる言葉は1年前と変わらない気がしたから、頑張って耐えた。



遠くへ行ってしまう美波は、別れ際に『またね』と言った。


『じゃぁね』でも『バイバイ』でもなく、『またね』。



‘また’がいつ来るかもわからないのに、いつも通りふわりと笑ってそう言った。



そしたら、‘また’があるような気がしたんだ。



何の根拠もない。


でも、漠然とそう思った。



だから、‘また’でいいと思ったんだ。


‘また’会った時、今度こそちゃんと気持ちを伝えればいいと。




美波がいない場所で、俺は頑張った。


勉強もそれなりにやってたし、部活をしない代わりにバイトを頑張った。


それなりに、恋もしたし、青春も十分味わったと思う。


美波のいう『高校時代にしかできないこと』は十分できたと思う。




だから、もうそろそろいいだろうか?

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