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「咲也くん…」
「やっぱり俺じゃダメかな…?」
美波の方を向いてそう言えば、困った顔をして曖昧に笑った。
困らせたいわけじゃないのに。
「咲也くん、ありがとう。
咲也くんは、だぼっとした制服を着崩してて見た目はいかにも不良くんだし、授業中は寝てばっかりだし、サボり魔で、いきなり年上に『お前』なんて言っちゃうけど、
だけど、本当は、真面目で、努力家で、真っ直ぐだって知ってる。
だから、本当に嬉しいよ。ありがとう」
そう言って君はふわりと笑ったけれど、その笑顔はどこか切なさを含んでいるようで、俺は何も言えなかった。
「……だけど、」
そう続くのがわかっていたから。
「咲也くんはまだ中学生。これから楽しいことがたくさんあるのに、」
「そんなの、」
「学生には学生時代しかできない恋もあるんだよ」
「美波以外好きになんかならない」
「うん、ありがとう。でもね、わからないよ、出会いはこれからたくさんあるんだから。学生しかできない思い出をたくさん作ってほしい」
「……」
今度こそ君が切なそうに笑うから、俺は何にも言えなくなる。
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