P.49

「咲也くん…」


「やっぱり俺じゃダメかな…?」



美波の方を向いてそう言えば、困った顔をして曖昧に笑った。



困らせたいわけじゃないのに。



「咲也くん、ありがとう。


咲也くんは、だぼっとした制服を着崩してて見た目はいかにも不良くんだし、授業中は寝てばっかりだし、サボり魔で、いきなり年上に『お前』なんて言っちゃうけど、


だけど、本当は、真面目で、努力家で、真っ直ぐだって知ってる。


だから、本当に嬉しいよ。ありがとう」



そう言って君はふわりと笑ったけれど、その笑顔はどこか切なさを含んでいるようで、俺は何も言えなかった。



「……だけど、」



そう続くのがわかっていたから。



「咲也くんはまだ中学生。これから楽しいことがたくさんあるのに、」


「そんなの、」


「学生には学生時代しかできない恋もあるんだよ」


「美波以外好きになんかならない」


「うん、ありがとう。でもね、わからないよ、出会いはこれからたくさんあるんだから。学生しかできない思い出をたくさん作ってほしい」


「……」



今度こそ君が切なそうに笑うから、俺は何にも言えなくなる。

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