P.31

「ごめん、おまたせっ…あれ?咲也くん?」



そこへ、ソプラノの明るい声が混じる。



「2人で何話してたの?」



何も知らない美波は、不思議そうに首を傾げた。



「何って…男同士の話だよ」



それに、男はニコリと笑ってそう言った。



俺はさっきから黙ったまま。



「何それ?気になるー」


「知らない方がいいよ、思春期の野郎どもの話しなんて。さ、帰るよ~」



男はニヤリと笑ってそう言うと、車の方へと美波の背中を押した。



「あ、うん。あ、咲也くん、何してたの?」


「別に…」



振り向いてそう言う美波に、俺はぶっきらぼうにそれだけ返すことしかできなかった。



「ん?じゃぁ、私たち帰っちゃうけど大丈夫?」


「……あぁ」


「え、じゃぁ、気をつけて帰ってね?バイバイ」



何も知らない美波は、不思議そうに見ながら、戸惑いながらそう言った。




そして、


「バイバイ、咲也くん」


ニッコリとしたわざとらしい笑顔向けたやつにイラッとした。

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