価値観ってなんだよ

P.30

補講が終わってから、俺は、いつかのように駐車場の近くで美波を待っていた。


別に話があるわけじゃないけれど、なんとなく、美波を待っていた。




「あ、君、は……あれ、誰だっけ?」



だけど、出てきたのはあのチャラ男で、そう言って悪びれた様子もなくヘラっと笑った。



「あ?…美波は?」



自然と眉間にしわが寄る。


コイツ、やっぱり苦手だ。



「あートイレだって」


「あっそう」


「美波ちゃん待ってんの?年上に惹かれる年頃か。いいね~、無謀な恋。若いね~」


「無謀?」


「あー、ごめん。でも、そうでしょ?中学生と大学生じゃ。俺が中学生に手出したら犯罪でしょ?」


「……」


「第一、価値観も恋愛観も違うだろうけどね。俺もあったな~、実習生とか憧れた時期。懐かしいわ~」


「……」


「まぁ、恋する気持ちは自由だからなー。ま、頑張りたまえ、若者」



そう言って、俺の肩にポンッと手を置く男。



ふざけやがって。



だけど、


「でも、あんまり困らせないようにね。美波ちゃんは優しい子だから」


そうニコリと笑って言う男の目は、笑っていなかった。



一気にピリッとした空気が張り詰める。

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