よしおの代わり
P.27
気まずいと思ったのは、最初だけで、何もなかったかのように、それまでと変わらない関係に戻った。
そんなある日の土曜日――
この日、美波の隣には違う男がいた。
「えっとー、米田の代わりに来ました桧山聡二(ヒヤマソウジ)です。よろしく」
そう爽やかに笑いながら、ゆるい挨拶した男。
それにザワザワと騒がしくなる教室。
特に女子の目が輝いている。
長身で、明るすぎない茶髪の男は、確かに男の目から見てもイケメンだと思うけど、俺は、胡散臭い笑顔に嫌悪の念を抱いた。
なんとなく、苦手だ。
理由はわからないけど、直感的にそう思った。
1時間目の休み時間――
「今日よしおは?」
いつものように俺らのところに来た美波にそう尋ねた。
「よしお?…あ、よっくんのこと?よっくんは‘よしお’じゃなくて‘与一’だよ。米田与一。前も言ったのに、覚えてなかったの?」
俺の言葉にキョトンと首を傾げた美波は、自己解決すると笑いながらそう言った。
そう言えばそんなことを言ってた気もする。
あの時はなんかムカついてたし、興味もなかったからあまり気にとめてなかった。
まぁ、今でも興味はないけれど。
‘よしお’だろうが、‘与一’だろうが、そんなことはどうでもよくて、
「なんで今日アイツじゃねーの?」
「よっくん今日サークルの試合があるんだって」
「それで、代わりがアイツ?」
‘よしお’が来ない理由はどうでもよくて、知りたいのはなんでアイツがいるのかってこと。
「そう。よっくん、ソージくんと仲いいから、代わってもらったんだよ」
「アイツ勉強教えられんの?」
「ソージくんああ見えて頭はいいからね。顔もよくて頭もいいなんてムカツクよね」
女子に囲まれているアイツに目を向けながら聞くと、美波も同じようにアイツの方を見ながら冗談ぽっく言って、ふふっと笑った。
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