P.13

彼女とは、2回3回と回数が増えるにつれてどんどん仲良くなった。


今では、すっかり名前で呼び合う仲。


まぁ、名前で呼ぶたび、『‘七瀬先生’でしょ?』と訂正を入れる彼女が納得しているかは別として。



この日もちゃんとチャイムが鳴る前に登校している俺。


チャイムが鳴ってすぐ教室に入ってきた担任は、俺を確認すると「お、瀬野ちゃんと来てるな」と満足そうに言った。


「土曜日だけじゃなくて、いつもそうしてくれたらいいんだけどな」と言う担任の言葉に、担任に続いて入ってきた彼女はフフッと上品に笑った。



「今日もよろしくお願いします」と挨拶した美波は、授業が始まるとすぐこっちに向かってきた。



「おはよう」


「あぁ、おはよう」


「いつもちゃんと来てないの?‘瀬野’くん」


ニッと悪戯な笑みを向ける彼女。



「咲也は遅刻常習犯だもんなー」


俺が答える前に、ニヤニヤと笑って言うダチ。



「そうなの?」


美波は悪戯な笑みを浮かべたまま、でもどこか不思議そうにそう言った。



少なくともこのクラスのやつにとっては、俺が遅刻してくるなんて当たり前で、今日みたいにちゃんと来ている方が珍しい。


だけど、土曜補講の姿しか知らない美波にとっては、俺が遅刻常習犯っていうのは疑問に思ったのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る