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「じゃぁ授業始めるぞー。学生さんたちは適当に見て回ってくれるかな」


「あ、はい」



てけてけと後ろに向かって歩いてくる女子大生。


それに合わせて俺の視線も動く。



補講なんて寝てようと思ってたのに、もうすっかり覚醒してしまった。



教室の後ろ、つまりは俺らがいる方に向かってくる女子大生。



「センセー質問」


女好きのダチが黙ってるわけもなく、からかうように声をかける。



「え?私?なに?」



『気軽に声かけて』とは言ったものの、こんないきなり話しかけられるとは思ってなかったのだろう。


女子大生は、キョトンとした顔をした。



「センセーは今彼氏はいますか?」



もはや定番ともいえるこの質問。


それに女子大生は慌てた顔をして、声をひそめた。



「それは今関係ないでしょ?」


ムッとしながらも声をひそめて丁寧に諭すように言うけれど、


「いーじゃん。いるの、いないの?」


うちのバカは悪びれた様子もなく、気にせず大きな声でそう言った。



「ちゃんと先生の話を聞かないと」


「うん、で、いるの?いないの?」


「はぁー、まったく……いません。以上、勉強、勉強」



何を言っても悪びれた様子なくニヤニヤしながら同じ質問を繰り返すバカに、女子大生は諦めたのか、呆れながらそう答えた。



それに「いないってー」と騒ぐ馬鹿ども。



案の定、「そこ静かにしろ」と担任に怒られて、「すいません」と申し訳なさそうに言うのは、女子大生。



その様子を、頬杖をつきながら始終傍観していた俺は、こっちに向きなおした女子大生と不意に目があって、その途端、彼女がふわりと笑うから、なぜかドキッとした。



思わずズッコケそうになるくらいの衝撃。



なんとかそんなカッコ悪い姿は回避できたけれど、なんだか恥ずかしくなって、視線を配られたプリントに移した。



わけのわからない数式がずらりと並ぶ。



俺の真横を彼女が通り過ぎる時、ふわりとフローラルの香りがした。



それにまた、心臓が異常な動きをした気がした。


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