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担任の授業は頭に入らない。
って、いつものことか。
いつもは飽きて寝ている俺。
まわりのやつらはいつの間にか寝ていた。
でも、なんだか寝る気にはなれなくて、頬杖をついて、ぼんやりと黒板を眺めていた。
不意にフローラルの香りがしたと思ったら、
「大丈夫?どこかわかんないところある?」
あの女子大生が覗き込むように見てきた。
「え?あぁ」
「なんかあったら聞いてね」
とっさのことに気の抜けた返事をした俺に、女子大生はそう言ってふわりと笑った。
ドクンと心臓が大きく打つ。
「あ、」
背を向けて去ろうとしていた女子大生の背中に、思い出したようにそう呟けば、
「ん?」
と言って、軽く首を傾げて振り向いた。
「お前、身長何センチ?」
「『お前』って…まったく『七瀬先生』て呼びなさい」
俺の疑問に、ムッとしてそういう女子大生。
それでも、俺は気にせず続ける。
「ん、で?150㎝くらい?」
「もう、失礼なっ。152.8㎝です!」
「ぷっ、ほとんど一緒じゃんか」
ご丁寧に小数点まで言う彼女に、思わず笑ってしまった。
「違う違う、そんなにちっちゃくないもん」
「ふっ、そーですか。美波センセー?」
ムキになって言う彼女に思わず笑いながら、からかってそう言えば、
「あ、ちゃんと名前覚えててくれたんだねっ」
予想に反して、そう言って嬉しそうに笑った。
「は?あぁ」
「嬉しいなっ。わかんないことあったら『七瀬先生』に聞いてね。あ、勉強のことで、ね」
ついさっきまで怒っていたのに、そう言って嬉しそうに笑って、前の方へと歩いていった‘七瀬センセー’。
その後ろ姿は、小学生に間違えられそうなくらいで、思わずぷッと小さく笑ってしまった。
ホント、ちっちぇーなぁ。
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