第3話 新しい友だちとご主人さま

 春が来て、夏が終わって、秋も冬も過ぎ去って。

 そんなことが何回もくり返されて、ご主人さまは高校生になった。


 毎日学校や塾でいそがしそうなご主人さま。だけどボクのさんぽは、欠かさずやってくれている。

 ボクはそんなご主人さまが、やっぱり大好きだ。


「ハチミツ、おさんぽに行くよ」


 今日もまたいつものように、ボクはリードをつけられて、ご主人さまといっしょに家を出る。

 それにしてもご主人さま、すっかり大きくなっちゃったなあ。

 前はあんなに小さかったのに。


 小学校に入ってすぐのころは、さんぽの途中で迷子になったりしていたけど、もちろん今はそんなことはない。

 いつものさんぽコースの公園に向かって、一直線だ。


 とちゅう、横断歩道で信号待ちをしていると、ご主人さまが言ってきた。


「今日は紹介したい子がいるから、なかよくしてあげてね」


 紹介したい子? いったいどんな子だろう? ダレかは分からないけど、ご主人さまの知り合いなら、きっといい子にちがいない。


 ワクワクしながら公園に着くと、そこにはご主人さまよりも背が低い、小学校高学年くらいの男の子がいた。


 男の子はご主人さまを見ると、こっちにかけてくる。


「カスミさん、こんにちは」

「八雲くんお待たせー」


 どうやらご主人さまと男の子は顔見知りみたいだけど、もしかして紹介したい子って、この男の子のことなのかな?


 すると思った通り、ご主人さまはその子をボクに紹介してくれた。

 話を聞いてて分かったけど、男の子は最近ご主人さまとなかよくなった小学生。

 動物が好きだから、ボクに会わせてあげたかったみたい。

 目をキラキラかがかやかせていて、かわいい男の子だなあ。


「ハチミツって名前なのさわってみる?」

「はいっ!」


 男の子は、そっとボクの頭をなでてくる。

 あ、この子からも良い匂いがする。さすがご主人さまのお友だちだ。

 何だかうれしくなったボクは、男の子に頭をこすりつける。


「わっ、くすぐったい」


 もっふもっふ、もっふもっふ。


 ボクは思う存分、男の子にじゃれついた。

 男の子はとても幸せそうにボクの体をそっとなてくれて、ちょっぴりくすぐったかったけれど、とっても気持ちがいい。


「人なつっこくて可愛いですね。そういえば、どうしてハチミツって名前なんですか?」

「そんな感じの色だからだよ。ちょっと単純なつけ方だけど」

「そんなことないですよ。シンプルイズベストです。だよね、ハチミツ」


 ボクは「わん」って鳴いて、男の子に応える。

 この名前はご主人さまがつけてくれた、とっても良い名前だ。

 その良さが分かるだなんて、やっぱりこの子は良い子だなあ。


 ボクは男の子とすっかり仲よくなって。

 帰る時間になってもまだ遊んでいたいって気持ちになっちゃった。

 けど、ワガママを言ったらいけないから、残念だけどこれでサヨナラだね。


 すると、男の子がご主人さまに言ってきた。


「もし迷惑でないのなら、また遊ばせてもらってもいいですか?」


 え、また遊んでくれるの? やったー、ボクももっと遊びたいー!

 期待を込めてご主人さまをじっと見つめると、ご主人さまはクスリと笑った。


「全然良いよ。私も塾とかあるから毎日ってわけにはいかないけど。予定が合う日でよければかたわないよ」

「本当ですか」


 良かった、これでまた遊べるね。

 ボクはもう一度男の子にスリスリして、全身で喜びを表現する。

 

 新しい友達ができて、とってもうれしい。

 それに男の子に喜んでもらえて、ご主人さまも嬉しそうだった。


 楽しかったなー。うれしかったなー。

 ふふふ。ご主人さま、またみんなでいっしょに遊ぼうね。


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