【谷崎潤一郎】刺青

 これから書く小説の参考に谷崎潤一郎さんの作品を読むぞぉ! と息巻いて、ひとまずおススメ作品をネットで確認すると「刺青だ!」とありました。


「刺青」は谷崎さんの処女作なんですね。読んだことがありませんでした。

 確かにおススメ作品です。

 もし他人から「谷崎さん読んでみたいんだけど、何から読めばいい?」と聞かれればこの作品を挙げるでしょう。


 理由は以下です。

・作者っぽさ(女性の足、被虐趣味の男性、耽美さ、官能さ)を味わえる。

・しかもたった6000字で!

・内容はエンタメで楽しみやすく、わかりやすい。


「作者っぽさ」とか書いてしまいましたが、全然詳しくない人間の思っている浅い物なので、ファンの方や研究している方には申し訳ない。

「サッカーって、ボールを蹴って相手のゴールに入れたら得点なんだよね?」くらいの理解レベルの奴が書いているとお考え下さい。(てへぺろ)


 ※100年以上前に発表された作品にこういうのもあれですが、以下ネタバレ注意です。


 のっけから「江戸時代の話」っぽかったり、主人公が「刺青師」だったりして取っ付きづらそうな印象を持ちました。

 文章もお上手ですが古くて読みやすくはありません。


 でも読み進めて行くと「刺青師の男が理想の美女に刺青を掘りたい話」なんだとわかり、一気に親しみやすくなります。高尚な話かと構えていたらめちゃくちゃ俗っぽいー。


 主人公の理想が超高くてなかなかいい女性が見つからず、三、四年彷徨っちゃうのが愉快ですし、頑張って探している辺りに好感が持てました。


 ついに理想の女性を見つけるのですが、顔ではなく足を見て「これだぁ!」ってなるところには笑いました。しかもここの部分にある足語りの熱量の強さ。

「刺青」自体、若々しいパッションを感じる作品ですが、とりわけこのシーンが凄まじいです。

「貴き肉の宝玉」だのなんだの言って褒めちぎります。

「この足こそは、やがて男の生血に肥え太り、男のむくろを蹈みつける足」など性癖がだだ洩れになっているところも面白いです。


 で、理想の女性と出会ってからの部分ですが……私にはちょっとご都合主義展開に感じました。

 あと主人公の行動が気持ち悪いです。

 この辺は深く考え過ぎず「創作だし」と、さらーっと流せば楽しめます。


 なんで主人公はタイミングよく「麻睡剤」を持っているの? とか、序盤であれだけ男性を苦しませていた刺青を刺っているのに、どうしてこの女性は起きないの?「この清吉の針は飛び切りに痛いてえのだから」じゃなかったっけ。

 麻睡剤ってそんなに効くの? だったら副作用とか凄いんじゃない?


 なんて思ってはいけません。

 これは 創 作 な の だ か ら !(単に私の読解力・知識不足なのでしょうか……)


 ※主人公は男性相手の時にはわざと痛めつけた可能性もあるなと思いました。(仕事にめちゃくちゃ趣味を持ち込むタイプ)

 刺青の痛みをカレーの辛さみたいに調整できるのかはわかりませんけど。


 この作品は主人公の視点で考えるとハッピーエンドなんですが、つい相手の女性のことを考えてしまいます。

 相手の女性視点で見ると、他人の欲望のせいで知らない間に体に消えない跡をつけられ、ある意味人生を狂わされたわけです。

 可哀想だな……と思いましたし、この主人公の「ざまぁ」物が読みたいと思いました。

 ありませんかね、二次創作で。


「ざまぁ」が人気な理由がよくわかりました。

 報いを受けて欲しい者に天罰が下るから読み手はカタルシスを感じて楽しめるわけですね。


 相手の女性は刺青を入れられて喜んでいるようなので、あくまで私が「えぇ…」となっただけなんですけどね。


 それはそれとして、清吉が朱刺とかぼかしぼりをされて痛めつけられる二次創作を誰か下さい。

 あ……でも、そんなことをしても「ざまぁ」どころか清吉は喜ぶだけかもしれませんけどね!

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