【エッセイ】小説や漫画などなにかしらを読んで思ったこと記録【感想文】

桜野うさ

小説(文豪系)

【谷崎潤一郎】秘密

 この作品には女性の足こそ出て来ませんが、谷崎さんの作品の中でかなり好きです。

(※谷崎潤一郎さんといえば女性の足と被虐趣味な男性ですよね? 違いますかね?)


 物語の立ち上がりはゆっくりでじれったい。 でも妖しげな空間で主人公が非日常に耽溺するところから一気に面白くなるんです!


 魔術や解剖について書かれた本を床に散らばし、地獄極楽の絵図を壁に飾り、香など焚いて秘密基地を作って悦に浸る…。

 働かなくてもよかったらずっとこんな場所にいたいですね。


 主人公は秘密基地だけでは満足せず、女性の格好で外を歩くようになってしまいます。

 非日常がどんどん日常に浸食して行くところにハラハラします。


 化粧するシーンがまたいいんですよね。

 女性にとって化粧は「日常」で、私みたいに「面倒だなー」と思う人も結構にいると思います。

 でも主人公は初めてするから瑞々しい感動があるんですよね。

 それが色っぽい文章で書かれているので魅力的です。


 色っぽいと言えば服を眺めるところもそうですね。

 この方の文章って普通のシーンでもいかがわしいんですよねー。

 だけど上品。耽美なんですよね。


 女性の格好で街を歩き、遊び、夜中に妖しげな秘密基地に帰って来てその恰好のまま余韻に浸るシーンは淫靡です。

 こういう退廃的な感じいいよね!と思っていたら、主人公も廃頽した快感に魂をそそられていました。


 この、欲しい時に貰えている感じ!

 だよねー、わかるわかる! って言いたくなるこの感じ!

 これが文豪の力なのか。単に相性がいいのか。でもやっぱり文豪の力なんでしょうね。


 古い葡萄酒の酔いって表現が、不健康そうでまたいい!

 日本酒じゃなくて海外のお酒なところに拘りを感じました。


 主人公いわく、女装姿はかなりの綺麗みたいです。(一人称なのでどこまで信じていいのか…ですが)

 しかし昔振った女性に美しさで負けちゃうんですよね。


 なら男性としてその女性を征服して勝ってやろうって思うところが、女装キャラでしかできない発想なので面白いです。

 でもそんなことしたらより一層情けないような、もっと負けちゃっている気もしますが……。


 昔振った女性の秘密を暴いた主人公は、さらなる歓楽を求め、もはや非日常が日常がになってしまいます。

 恐怖のサスペンスですね……。


 実際にあったら困る話ですが、ラストの零落ぶりも含めて退廃的で耽美な魅力を持つ面白いお話でした。


 文章がとってもいいですね!

 お上手なのはもちろんですがすごい好みです。

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