うちの猫

@omuro1

かつて野良猫だったキジトラは、今ではユキと名付けられ、人間の家で暮らしている。



凍てつく空気が澄みきった朝。


揺れるススキは霜をまとい、淡く金色に輝いていた。



ユキはいつもの温かな居場所を抜け出し、冬枯れの丘を目指している。


からっ風がユキの顔を強く撫でる。


「どこまで行くの?」と、体の奥からささやく声が響く。


振り返ると、見慣れた景色がすっかり遠くに霞んでいた。


ユキは思わず足を止め、灰色の空をじっと見上げる。



ユキはくるりと向きを変え、来た道を猛然と走り出した。


冷たくも柔らかな風が、小さな背中をぐんと押す。


明かりが見えると、さらに足を速め、舞い散る雪を切り裂くように駆け抜けた。



家の中に飛び込むと、ひと息つく暇もなく、すぐさまトイレに駆け込んだ。


用を足しながら、ふっと目を細める。



「ユキ、あけましておめでとう」


ユキは、人間をちらりと見やり、ゆうゆうと通り過ぎていく。


暖かいストーブの前でごろりと横になると、小さな鼻をひくつかせた。

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