第2話

そう、君との出会いは本当に偶然だった。

天気のいい日に屋上に出た日のことだ。

ベンチに座って足をぶらぶらさせながら、ぐちぐちつぶやく君に出会った。


「んー……なんか違うんだよなぁ。もっとドガーンって感じが……」


最初見たときの第一印象は、「何こいつ」だった。

夏だというのに季節外れの赤いベレー帽。

垂れる茶色い三つ編みはぴょこぴょこと乱雑に纏められている。

そして、服装は決められた病院着じゃなく、完全なる私服。

もうおかしな侵入者とでもした方が楽だと思い始めてきた。

そんな時だった。


「ねぇ~君はどう思う?」


ん? は?

いや、僕じゃないよな?

僕みたいなのに話しかける人、いるわけないし。

と思っていた矢先だった。

君が体をこっちへ傾け、視線を合わせる。


「私が君の視線に気づいてないとでも思った?」


そういって、君はうししっと悪戯いたずらっ子のように笑った。

なんか、心がドキッとした気がした。


「だから、こっちおいでよ」


そういって君は僕を手招きした。

神にでも操られたかのように、僕はふらふらとそちらへ向かう。

もしかしたら彼女は危ない侵入者だったのかもしれない。

けれど、僕の中にあったのは希望だけだった。


「あーこら! ぎゃーっ!」


急に君が叫び始めた。

どうしたのかと思ってそちらをむくと、君は「まてー!」と、ある1枚の紙を追っていた。



「私、絵描いてるんだけどさ、これどう思う?」


そうして彼女はやっとゲットした紙をペラっと裏返して僕に見せてきた。


「――――――これが、君の世界……?」

「ん? そうだよ?」


彼女の絵は僕とは段違いのものだった。

その絵は、ここの風景だ。

でも、違う。

君の世界は、色に満ちていた。

いろんな色が溶けるように混じりあって、でもそれぞれの個性を残している。

――綺麗だ。

ろくな言葉を発せない。

それ程に、君の絵は魅力的だった。

君の世界は、君は魅力的だった。

ここから、僕の人生が始まる。

そんな気がした。

いや、そうだった。

1人の少女、あやとの出会いから――。

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