第9話 ダンジョン攻略

次の授業はダンジョン攻略だ。


ヴェルサンディが威厳を持って口を開く。


「ここは古代の魔法陣で作られたダンジョンだ。構造が変化し、毎回異なる挑戦が待っている。さらに、複数のダンジョンが同時に生成され、それぞれ独自の試練がある。さあ、好きなダンジョンを選んで挑め。」


そう言われると、各自が散らばる。俺は一番近くのダンジョンの前に立った。


その外観は古代の遺跡のようで、時の流れに抗うかのように巨大な石造りの壁が立ち並んでいる。壁は苔やつる植物に覆われ、なおその威厳を保っていた。


「よし!俺はこういうのを待っていた。やってやんぜ!」


「ははは。ここはチームを組んで行った方が良いよ。モモとジャックにも声をかけるね」


「そうか。せいぜい俺の足を引っ張るなよ」


俺は戦術と体力に優れ、戦闘での実力を発揮できる。

ユージーンは精霊の力を使い、サポートと攻撃が得意だろう。

モモは獣人だから、恐らく俊敏で機動力が高く、戦術的に役立つ。

ジャックは明らかに…頑丈で戦闘力が高い見た目をしているし、前衛を任せる事ができそうだ。


ユージーンがモモとジャックに声をかける中、これは面白くなりそうだな。シンヤは高鳴る期待にニヤリと口角をあげた。


「それじゃあ、行くぞ!どんな罠やモンスターが待ち受けているのか楽しみだ!」



◇◇◇◇◇



薄暗いダンジョンの内部は、湿気がこもり、冷たい空気が漂っている。


石の壁は苔に覆われ、時折、血のような赤い光がちらちらと揺らめいている。長い廊下が続き、足元には瓦礫や古い骨が散乱していて、踏むと「ゴリゴリ」と不快な音を立てる。


「ヒィ!ガイコツなのだ!」

ぴょん!と跳ね上がり青ざめるモモをよそに、俺は前は出て指示を出す。


「罠や敵が出てくる前に、サクサク進めるぞ。」


ユージーンは周囲を見渡しながら、手に魔法の光を宿す。

「気をつけて。周りに魔法の気配を感じる。罠がありそうだよ。」


「罠は任せろ。ジャック、お前は前に出て前衛を固めろ」


「我了解!敵が出てきたらすぐに対処する!」


「待て。そこの壁に何か仕掛けがある。」

俺が仕掛けを見つけた時にはすでに遅かった。モモが青ざめている。


「えっ!触ってしまったのだ!」


ガラガラガラ!


一行はシンヤの指示のもと進むが、突然、壁が崩れ落ち、影が迫ってくる。


「ギャー!ギャー!ギャー!」


そこには、鋭い牙を持つゴブリンたちが待ち構えていた。彼らは黒い毛皮をまとい、手には小さな剣を持っている。目は赤く、大勢で一斉に襲いかかってきた。俺はすかさず臨戦体制に入る。


「ジャック、行くぞ!」


「我に任せろ!」


ジャックは長く鋭い爪をギラリと光らせて、ゴブリンの群れに突進する。


ザザザザザザザザザザン!!!


ジャックの鋭い爪でゴブリン達は血飛沫を上げてなぎ倒されていく。


「シンヤ、後ろに気をつけて!魔法で補助するよ!」

ユージーンが水の魔法で障壁を展開する。


「ユージーン、お前もやるなァ!」


ユージーンは魔法でバリアを貼りながら背後を補助し、斧で一体一体確実に倒していく。そしてモモは素早く動き、敵の側面を攻撃して注意を引く。


パシン!


モモの弓矢が空を切り、ゴブリンの一体に命中する。

「敵の隙間をついて攻撃してるよ!シンヤ、その隙に進むのだ!」


「ギャーーーーーー!!」


ゴブリン達の断末魔が響く。ジャックが高速でゴブリンの群れをバラバラに切り刻む中、シンヤは一際大きなゴブリンを一体見つけた。


「アイツが親玉だな。俺がぶっ殺す!」


シンヤは、ターゲットを狙うために腰を低くし、斜めに素早く駆け出す。彼の姿はまるで流星のように駆け抜ける。


シュッ!!


風を切る音が響く。シンヤはそのまま空中に跳躍し、急速に高さを稼ぎながら、親玉の頭上で回転し、鋭い刃を閃かせた。


「ギャアアア!」


親玉の悲鳴が響き渡る。シンヤは体を反転させ、ゴブリンの頭を狙った一撃を放つ。素早い動きで刃を振り下ろすと、親玉の頭は一瞬で横に飛び、血飛沫が周囲に散る。


ーシュッ!シャッ!!


「やったぞ!!お前ら、残りのゴブリンも全員倒したな!」


「ああ!ゴブリン達は全滅だ!」


「良かったのだ。勇敢に戦ったのだ!」


一行が再び進み始める。ダンジョン内の進行が続く中、複雑な迷路と罠が待ち受けている。「カラカラ」と音を立てながら、冷たい風が通り抜け、緊張感が高まる。


「この先に何かありそうだ。ユージーン、お前の力でこの仕掛けを調べろ。」


「…うん、見つけたよ。ここに罠がある。気をつけてね」


そこには異世界の古代文字が刻まれた、時計のような回転円盤が壁に刻まれていた。俺には読めない文字だ。


「これは…なんの文字だ。どうすれば…」


「僕に任せるのだ!」


モモが得意げに円盤を回し始める。罠を解除する際、「カチッ」という音が響くと、ジャックが安全を確認する。


「罠は解除したのだ!えっへん。」


「モモ、すごい。そして可愛い」

ジャックの釣り上がった目が、ニッコリと、半月の形に変わる。


「可愛いって言うなー!僕は男の子だぞ!」


モモは耳をぴょこぴょこさせながらジャックにぷんすか怒る。賑やかに(?)一行は協力してダンジョンの奥深くまで進んでいく。


「どうやらここが最深部のようだな」


目の前には巨大な石造の扉があり、禍々しいオーラを放っている。


「だいたいこういう扉の奥には、ボスが待ち構えているんだよね」

ユージーンが一筋の汗を垂らしながら、真剣に話す。


「関係ねえ。進もう。俺たちが連携すれば大丈夫だ。」


ギイイイイイイイイイ


シンヤとジャックが大きな扉にもたれかかるようにして、石作りのドアをスライドさせる。


「グルルルルルルルルルルル」


ボスは異形の魔物で、体は黒い鱗に覆われ、鋭い爪と目は炎のように赤く光っている。頭には大きな角が生え、まるで巨大な雄牛の悪魔のようだ。


湿った空気が肺に重くのしかかるようで、シンヤは一瞬息を詰めた。しかしその緊張感が俺を刺激して、闘志が燃え上がる。俺はニヤリと八重歯を見せながら仲間達に声をかける。


「…準備はいいか?行くぜ!」


「ああ!僕は魔法でサポートするよ!」


「ひいぃ!すごい迫力なのだ!」


「モモ、我が守る、安心せよ」


ダンジョンのボスとの激しい戦闘が始まる。ボスが攻撃するたびに、「ズドン」と大地を揺らし、その一撃が周囲に衝撃波をもたらす。シンヤが前線で戦い、ジャックがボスの攻撃を防ぎ、ユージーンとモモがサポートと攻撃を繰り返す。


「ジャック、もう少しだ!みんなで一緒に攻撃しろ!」


「我了解!」


一行は連携を取り、シンヤがボスの注意を引いている隙に、ジャックが強烈な一撃を叩き込む。ボスは一瞬の隙を見せる。


その瞬間、シンヤは全力疾走し、壁を蹴り上げて、飛び上がりながら、ボスの頭上に飛び乗る。彼は足を使ってしっかりとバランスを取りながら、ボスの角をしっかりと掴む。


「イッケェェェェ!」


シンヤがボスの頭上に飛び乗り、角を掴んだ瞬間、ボスが凄まじい力で暴れ始めた。シンヤはその勢いに振り回され、バランスを崩しかける。


「くっ…!抑えきれねぇ!」


ボスは猛然とシンヤを振り落とそうとし、巨大な爪でシンヤに向かって攻撃を繰り出す。シンヤは咄嗟にかわすものの、足を滑らせて落ちそうになった。


「まずい…!」


その瞬間、ユージーンが手を広げ、精霊の力を発動した。


「シンヤ!助ける!」


ユージーンの魔法から水流が放たれ、シンヤの体を包み込む。瞬時に彼の体が浮き上がり、軽やかに空中でバランスを取り直す。


「助かった…!」


ボスはシンヤを狙ってさらに攻撃しようとするが、ユージーンが魔法の障壁を展開してシンヤを守る。その瞬間、モモが遠くからボスの隙をついて矢を放つ。


「今だよ!シンヤ!」


矢はボスの片目に命中し、怒りに燃える咆哮が響き渡る。シンヤはその隙を逃さず、再び全力でボスの頭上に跳び上がり、剣を高く掲げる。


「ユージーン、モモ、ありがとう!これで終わりだ!!」


シンヤは剣を高く掲げる。彼の全体重をかけて、ボスの脳天に向けて剣を突き刺す。その瞬間、周囲に眩い光が走り、ボスが悲鳴を上げて崩れ落ちる。


「ギャオオオオオオオオオオオオン!!」


ついに、ボスを倒し、ダンジョン攻略に成功する一行。ボスが崩れ去ると周囲が静まり返り、達成感とともにお互いに対する信頼感が深まる。


「助けられたな。ありがとな、ユージーン!」


「何、僕たちはチームだろ?」


「やったー!みんなで力を合わせて勝ったのだ!」


「我も役立てて良かった」


一行は無事にボスを倒し、ダンジョン攻略に成功したことを祝福し合う。



◇◇◇◇◇



ダンジョン攻略後


ダンジョンから出たシンヤたちのグループは、他のクラスメイトたちと合流する。周囲では様々な反応が見られる。


どうやら精霊学の授業でお世話になったフレアは、途中で胸元のブラジャーを無くした様で、乳首が見えない様に必死にその貧乳を腕で抑えている。


俺達は擦り傷程度で済んだが、体力を消耗していた。


「お前ら、やっと出たな。だいぶ時間がかかったな」


「お疲れ様、シンヤ。皆のチームプレー良かったね!」


「他の皆んなはどうなのだ?」


周囲では、他のクラスメイトたちもぞくぞくとダンジョンから出てきている。いくつかのグループが勝利の証を示しながら出てきて、興奮と達成感を表しているが、中には驚くべき光景も見られる。


魔術師のミヤビとその従者ドルチェは強大な力でダンジョンそのものを破壊していた。


「この程度のダンジョン我々にはお遊びのようなものだ」


「キャハハ。ダンジョンごと破壊するのは気持ちよかったですわね♡」


ドルチェは白髪の長い髪を風になびかせながら、ポンポン、とゴスロリ服に着いた埃を払う。


他の生徒たちは驚きと共にそのグループを見つめる。ダンジョンの破壊跡は広範囲にわたっており、破壊の痕跡がまだ残っている。


そこに月の女神ルナが冷静な反応を見せる。彼女は妖精のアロマと愛の女神のモカとチームを組んでいた。


「ダンジョンを破壊するとは。この授業の趣旨を理解して居ないのね」

とルナは冷静に周囲を見渡す。


「破壊とか、趣味が悪いわね〜」

モカが同調している。


「……」

アロマは破壊の痕跡を見て呆れていた。


そういうルナのグループはダンジョンを最速でクリアしている。


ルナの太ももは露わになり、スラリとした脚が美しい。

そしてその横に立つモカはふぅと言いながらストレッチをすると巨乳が大胆にも揺れて、今にもその乳房がドレスからこぼれ落ちそうだ。

アロマはと言うと、戦闘の汚れひとつなく、落ち着いた表情をしている。


その光景を見たシンヤたちは、互いに目を合わせる。シンヤの顔には驚きと共に焦りの色が浮かぶ。


「色んな奴らがいるんだな…」


「すごいな…僕たちももっと頑張らないと。」

ユージーンが笑顔で言う。


「でも僕たちもいいチームワークだったのだ!」

モモはぴょんぴょんと跳ねながら勝利を喜ぶ。


「これからも我は友と共に一緒に強くなっていく」

ジャックも闘志を燃やしていた。


周囲のクラスメイトたちは、自分たちの成果や他のグループの成果を振り返りながら、次の挑戦に向けての意欲を新たにしている。シンヤたちもその姿を見て、自分たちの成長と今後の課題について考えを巡らせる。


「次はもっとかっ飛ばしていくぞ。」


一行は達成感と共に、これからの挑戦に向けて新たな決意を胸にする。そして、周囲の興奮と驚きの中、ダンジョン攻略の授業は終わりを迎える。

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