ep.6『猫と告白応援 ①』
「なぁ、蘭!相談にのってくれ!」
お昼休み、弁当の準備をしていると友達の優太が飛んできた。
その顔は一目で分かるほど焦っている。
それにしても相談か。
友達の頼みだし、頑張りたいが俺に出来るだろうか。
泣きついてきた優太の声に目が覚めたのか昼猫がこちらに向いた。
まだ、寝ぼけているのか目を閉じかけている。
「何かあったのか?」
「いやほら、オレ好きな人がいるんだけどよ」
わぉ、恋愛相談か。
俺には不得意分野すぎる。
他に期待できるのは………昼猫はダメだろうな。
でも、周りに得意そうな人なんかいない。
それに、俺だけに相談してきたって事はあまり広められたくないのだろう。
「じゃあ、お弁当食べながら聞くよ」
「おう、頼むよ。昼猫もよければ聞いてくれ」
「ん」
机をくっつけてお弁当を食べ始める。
昼猫や優太と別々にお昼は食べたことあるが、二人と同時に食べる……というか、一緒にいるのは始めてだ。
なんだか、小学校の友達と中学校の友達と一緒にいる感じに似ている。
とにかく、変な感じだ。
まぁ、同じクラスなんだけど。
「それで、好きな人って誰なんだよ」
「じ、実は………委員長なんだよ」
「え!?澤田さん!?」
「ちょッ!静かに!」
澤田さんは、黒髪メガネの真面目で成績優秀。ぶっちゃけアホの子である優太とは真反対な存在である。
しかし、二人に接点があった気がしないけど………好きになるくらいだ。
何かあったのだろう。
「それで、どうして好きになったんだ?」
「こ、こないだ………体育のバドミントンがチラッと見えてさ。
めっちゃ、かっこよかったんだよ」
「一目惚れってやつか」
「ま、まぁ、そんな感じだよ」
照れくさそうに一目惚れであることを認めた優太は、おかずをかきこんで落ち着いた。
顔が若干に赤くなっており、余程と恥ずかしいんだろう。
冷やかしたい気持ちもあるが、勇気を出して相談してくれたんだ。
こちらも真面目に聞こう。
「で、俺に何を相談するんだよ?」
「相談っつーか。協力して欲しくてさ」
優太が言うには、澤田さんに告白するのを手伝って欲しいらしい。
何度か会話をして一緒に帰るほどの仲になり、ようやく、告白することを決めたんだとか。
正直、それくらいで告白をして大丈夫かと不安だが、優太は覚悟を決めているらしく、その意見は心に止めておく事にした。
「それで、どこで告白するんだ?」
「それが中々……蘭はどこがいいと思う?」
「えぇ………どこって言われても」
二人して考え込んでいると、お弁当を食べ終わり昼寝していた昼猫が突然、口を開いた。
ムクリと机から起き上がり、眠気まなこで言い放ったのだ。
というか、聞いていたのか。
てっきり、興味なくて完全に寝ているのだと思っていた。
「カフェ。カップルパフェがいい」
「か……パ?なんだって?」
「そうか!アレならお互い意識せずにはいられないな!」
新谷からの提案に、すでに経験している俺は賛同した。「カップル」という単語で初手は決まる。
さらに、「注文」や「一つの物を食べるという行為」、「あ〜ん」など多種多様な攻撃手段が揃ってる。
お互いにあと一歩ならば、確実に背中を押してくれる心強い味方になってくれるだろう。
それに、カフェならば怪しまれずに援護することも出来るかもしれない。
「ま、まさか……昼猫って恋愛上級者!?」
「ふふふ……気がついたか。愚か者」
「気が付かなかった!!」
「いや、急にどうした?」
そんな会話を繰り広げる昼猫と蘭を見て、優太は思った。
この二人は一緒に帰って、パフェまで食って、付き合ってないのか、と。
自分が告白までに通る道を網羅しているのに、恋愛に何も発展していない。
この二人の案に乗っていいのかと、相談しておきながら優太は不安になっていた。
しかし、やる気となっている二人は当の本人を置いてどんどんと話を進めてしまう。
「それじゃ、カフェに誘う計画を立てよう」
「それなら今日、図書室で勉強を教えてもらう約束をしてるんだ。
そこで、お礼として誘えるかも……」
「かもじゃない。誘え、佐々木優太」
サングラスをかけた恋愛上級者、昼猫からGOサインが出た。
優太は躊躇っているが、誘うしかない。
少しの間、迷っていたが覚悟を決めたらしい。
それにしても、昼猫。
こういう話題って興味ないかと思っていたが一番ノリノリである。
最初は、自由人で人に興味のない人だと思ってたけど違った。
人は見かけによらないという言葉通りだな。
「じゃあ、カフェに誘うのは今日の放課後でいいな」
「あ、あぁ………」
告白場所へと誘い込む決行日が決まった。
あとは、優太から「誘えた!」という報告を待つのみである。
「じゃあ、終わったら結果を報告するな!」
「あぁ、良い結果を待ってるぜ」
お昼休み終了のチャイムがなり、優太は慌てて席へと戻っていく。
カフェの日に援護する計画はまた今度決める事になった。
あまり、考えたくないが、失敗した場合はただ虚しく計画が無に帰ることになってしまうからね。
優太はそれを考慮してくれたのだろう。
まぁそれか、あの緊張具合からして、それどころじゃなかったのかもしれない。
「東雲蘭。連絡先ちょうだい」
「え?あぁ、確かに交換してなかったな」
新谷さんがスマホを俺に向けて差し出す。
アイコンは、可愛らしい猫の写真。
新谷猫じゃないよ、キャットの方の猫ね。
「毎朝の目覚まし電話待ってる」
「どうせ、起きないでしょ」
「よくご存知で。正解」
少し疑問なのだが、新谷さんにメッセージを送ったら返事って来るのだろうか。
なんだか、一生、既読がつかない気がしてしまう。
すると………
【よろしく】
そう書かれたスタンプが送られてきた。
少しヘンテコな絵で面白い。
それに、反応するようにヘンテコなスタンプを送り返した。
そして、昼猫は、よほど面白かったのか、スタンプの送り合いがしばらく続いた。
◇◆
その日の夜、夕飯を食べているとスマホが鳴った。
見てみると、優太からメッセージが送られてきたみたいだ。
そういえば、優太から誘えたかの連絡が来るのだった。すっかりと忘れてた。
「こら、蘭ちゃん。ご飯中にスマホはダメですよ〜」
「ごめん。姉さん」
「そうだぞ!せっかくの家族団欒なのに!」
俺は、結果だけを見てスマホを閉じた。
どうやら成功したらしい。【やった!】というメッセージが届いていた。
あ、そうだ。
あとで昼猫にも連絡しておかないと。
あんなに楽しみにしてたし、連絡を待ってるかもしれない。
まぁ、昼猫だし、もう飽きてる可能性もありえるけど………
その後、昼猫にメッセージを送ったが、返信が来たのは告白当日である次の日だった。
しかし、来てくれるみたいだ。
正直、一人は不安だったので良かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます