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「あっでも、アタシは絶対に許さないからな?」


唐突の宣言に、男はジトリと女に視線を向けた。


「いきなりなんなんだ。過去は過去なんだろう?それに、殺られたのはお互い様だろ」

「いいや、あれはお前が悪いね!!アタシは故郷も襲われたうえに道連れにされたんだぞッ!?まずは謝れ!アタシに謝れ!!」

「断る。つくづく五月蝿い奴め……」


それからというもの、二人の言い争いは長きに渡り続いた。意地でも謝らせたい女と謝罪要求を拒む男は互いに折れず、日が傾き掛けた頃に漸く女はある提案を出す。


「あーもう、わかった!そんなに謝りたくないってんなら慰謝料だ!慰謝料で手を打ってやる!!」

「……何故にそうなる」

「当たり前だろ?先に手を出したのはそっちだし、それにさっきの婚活パーティーだって高い金払って来たのに途中でお前の取り巻きに追い出されたんだぞ!?」

「いやまぁ、それはそうだが……」


確かに、男は婚活パーティーでの出来事は申し訳無いと思っていた。すると、女は徐に金額を要求する。


「じゃあ、婚活に掛かった費用の5万円を慰謝料で払って貰おうか……?」


手を広げて不敵に笑う女に男は不思議そうに告げる。


「なんだ、たったの5万でいいのか?」

「はっ……?たったって、言えばもっとくれるのか!?」

「いや、やる気は無いが……」


目を輝かせながら食い付く女に、男は少し押され気味になりながら否定するも、女は食い下がらずにせがむ。


「じゃあ、10万!!今月ピンチなんだよ、頼む!!」

「いや、だから……ん?金に困ってるのか?」

「当ったりめぇよぉ!こちとら根っからの貧乏人で毎日がカツカツだいッ!!」

「そ、そうか……」


心配する男を余所に鼻を擦りながら貧乏生活を自慢げに話す女は哀れみの視線を送くられた。


「苦労しているんだな……」

「あぁ!だから慰謝料が欲しいんだ!5万でも10万でも……あっ無理なら3万でもいいから!頼むッッ!!」


今度は手を合わせて縋る女に男は少し考えた後、小さく頷いた。

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