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「だいたい……うわっ!」


急な事で受け身を取り損ねた女が尻もちをついた。何事かと見上げると、かつて魔王だった男の周りには女達が群がっていた。


「貴方様は高嶺グループの若社長、高嶺 夜王【たかみね やおう】さんでいらっしゃいますよね?」

「今じゃ知らない人はいらっしゃらないと言われるあの有名企業の!?」

「私、✕✕グループの令嬢でして……」

「高嶺様、是非わたくしとプロフィール交換を!!」

「私、貴方様の事が気になっておりまして……!」


キャアキャアと群がる女性達に周りの男性人同様、女はポカンと口を開けた。その光景を目の当たりにした人らは口々に噂する。


「あそこの若社長来てたのかよ……!?」

「スゲェやり手で何社も経営してるらしいぜ?」

「年収は数百億超えとかって噂らしい」

「じゃあ今回は勝ち目ねぇなぁ……」

「殆どの女が狙ってんの丸わかりだしな?」


落胆する男性達の会話を耳にした女は、あ然と目の前の男を見つめる。


『コイツ、そんなに凄い奴だったのか……!?』


度肝を抜かれていると、偶然男と目が合い、男は女を鼻で笑う。


「フッ!」

「なっ……!?」


まるで人を小馬鹿にした様な男の態度に、女はカチンときた。

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