第1話

ある日、僕がいつものようにソファーでミクを抱きしめていると·····

「うぅ〜っ·····」

腕の中のミクが急に唸り出した。

「ミク? どしたの急に唸り出して·····具合でも悪いの?」

「··········」

ふるふると僕の胸のに顔を押し付けたまま首を振るミク。

「違う? じゃあ何ーー」

最後まで言葉を紡ごうとしたが、紡げなかった。

ドン、という鈍い音で、僕の体はソファーに押し倒されていた。

「えっちょっ何? もしかして僕を襲う気ですか? 昼間っからエッチするつもりなの?」

急にソファーに押し倒され混乱する僕。

「·····違う」

そう答える彼女の声は、いつもの明るく元気な声とは正反対で。

地を這うような暗く重い声だった。

「·····もしかして怒ってるの?

最近エッチしてなかったから·····。 あ、でも昨日エッチしたじゃん·····もうしたいの?

全くミクは変態さんだなぁ·····」

苦笑いをしながらミクを抱きしめようとすると。

「·····ねぇ、よく話してるあの女性は誰?」

あの女性、というのは最近この近くに引っ越してきた女性のこと。

顔が綺麗でスタイルもいいので、ついつい長話をしてしまう。

よく会うのでいろんな世間話をしている。

「え? えぇあぁあの人? あの人はよく道端で会うから話してるだけ。別にそれ以上の関係はないよ。」

「·····そうなの?」

相変わらず声は低い。

「·····ねぇ·····もしかして·····」

僕がひとつの仮説に思いつく前に、彼女は行動した。

「あっち行ってよ!」

「えっ」

「いいから! 向こうへ行って!」

ヒステリックに叫ぶミク。

(ちょっと急に何が起こったのか理解できない·····。·····でも·····)

もしかしたら·····。

「あんたはさ·····うちよりあの人のほうがいいんじゃろ·····?」

「··········」

「·····だから、いつもあの人と話しとる。うちが話しかけても生返事ばっかじゃん、最近·····。」

涙をぽろぽろと零しながらミクは話す。

「しかも最近のえっちも、しっかりこまかくしてくれんくなったし·····」

ぐすっ、と鼻を啜りながら涙を拭うミク。

·····まったく·····怒ったり泣いたり忙しい姫様だ。

「やっぱりね·····」

「? 何が『やっぱり』なの?」

きょとん、とした顔で聞いてくるミク。

「いや·····やっぱりミク嫉妬してたなって·····」

「ふえぇっ?! ば·····バレてたの?!」

大袈裟なほど驚くミク。

「わかるよ、そんぐらい。」

「ぁうぅ·····///」

優しい声をかけると、さっきまでの怒りや悲しみは何処へやら。

「うぅ〜っ·····」

泣きそうな声で僕にしっかりとしがみついてきて、ぐりぐりとおでこを僕の胸に押し付けた。

「バレてないと思った?」

優しく頭を撫でる。

「··········///」

彼女は黙っているが、たぶんきっと。

わかっているようで。

「·····ごめん」

そんな言葉がミクの口からこぼれ出た。

「ん·····」

「さっき、あんなこと言っちゃって·····。·····本当はわかってた。あんたはうちさえおればそれでいいって言ってくれてるのに·····、うちはあんたが他の人と話してるの見ただけでうちのこと愛してないんか、って思っちゃって·····」

·····まあほんとのことを言えば、僕はあの人に惚れていたのだが。

頭の片隅に置いていたのだが·····どうしても気になってしまっていた。

·····まあ、さすがに分かるか。

「ごめんミク·····」

「ふえ·····?」

「実を言うと·····あの人に惚れてt」

「知ってた」

全て言い終わらないうちに言い放つミク。

「ゔっ·····デスヨネー」

「当たり前じゃ、ばか」

「·····」

ミクの蔑むような(いや実際蔑んでいるんだが·····)目と口調に、僕は何も言い返すことができない。

「·····」

沈黙に耐えきれなくなる前に、何か言わなければ。

「·····あのう·····許してくださいませんか·····」

「··········」

ミクは黙ったまま、こちらをじぃっと見つめている。

「·····お願いします·····なんでもしますから·····///」

目を潤ませ、上目遣いでミクを見る。

「··········」

ミクの表情は変わらないが、口元が少しにやけているのが分かる。

(もうひと押しか·····?)

「·····ダメ·····ですか·····?」

手を口元に持っていき、そう言う。

少女漫画のようになってしまったがしかたがない·····というか声もいつもより高くしている·····。

·····我ながら演じていて気持ち悪い。

「·····本当に」

「へ?」

「本当になんでもシてくれるんじゃろうねぇ·····?」

「·····っ?!」

こちらを見る目線は何故かにやにやとしていて。

小悪魔のような笑みを浮かべながらこちらに顔を近づけてくる。

「ふふっ·····そんな怯えんでもええじゃろ·····? こっちはちゃんとえっちされとらんけぇ溜まっとるんよ·····」

何故か男のようなセリフを言うミク。

·····どうやら·····

「·····怒ってるの·····?」

恐る恐る尋ねると、

「あったりまえじゃばか! どんだけうちが寂しかったんかわかっとらんのかあんた!」

眉間に皺を寄せ、僕の上に乗るミク。

そのまま僕の手を口元から退けると、

「んぅっ?!/// ふ·····っ、ん·····っ///」

口内を舐めまわすようなキスをしてきた。

少しして、ミクは口を離す。

「んぁ·····なんで急に·····?!///」

「っ·····/// ずっと寂しかったけぇの·····/// あんたを感じていたいんよ·····///」

行動は乱暴だが、言葉は優しい。

ミク、どんだけツンデレなんだ。

「·····そっか·····///」

「·····だから、うちだけを見て。他の人には目を向けちゃダメ。うちだけを·····。あんたがおればそれでいいの。あんたさえおればなんもいらん。」

·····いや、ツンデレだけじゃなくてヤンデレもあったか。

苦笑しつつも「はいはい。」と答える。

「わかってますよ、お姫様。僕はずっとあなただけを見つめてますから。」

「·····ほんと?」

ミクの声がいつもの明るい声に戻ってきている。

「ホントだよ。」

優しく声をかけ、ミクをぎゅっと抱きしめる。

「·····なんでもうちの望むことシてくれるんだよね?」

僕の胸に顔を埋め、ぽそっと呟く。

「うん、もちろん。ミクの望むことはなんでもするから。」

「·····じゃ、今日は寝かせん。」

「え?」

「夜中えっちしまくって今までの寂しかったところ埋めるんだから·····覚悟してよね。

あんたのせーえき枯れるまで搾り取ってやるから·····///」

·····おうおう、何かと思ったらやっぱりこれか。

「ミクが言うことはわかってるよ、だいたい。ミクはホントに万年発情期でえっち大好きな恋するうさぎちゃん♡だよね·····」

そう言いながら、少しイタズラをしてみる。

ミクを抱きしめている手を 、そっと背中から下げていき、ズボンの上から優しくお尻に触れ、撫でてみる。

「ひゃっ?!/// ちょっと、何するんよ·····そんなにうちとえっちしたいん?」

こちらを見上げ、いたずらっ子のようにこちらを誘うミク。

「·····まあ、エッチしたくないとは言えないな。」

だって、君がずっと僕だけを見てくれるから。

君も、僕だけをずっと見てくれる。

「·····わかったよ、これからスる?」

そんな僕に彼女は少し呆れながらも付き合ってくれる。

「え、これから?」

「当たり前じゃろ? さっきも言ったじゃん、今日は寝かせんって」

「いや、夜は寝かせないって言ってたけど·····」

少々焦りながら、彼女の手を僕の股間から無理矢理剥がす。

いつの間にか彼女、僕の股間を弄っていた。

「いやいや、そんなにシタイんなら今からでも·····♡」

にやりと笑って、ちろりと舌なめずりするミク。

「うえぇっ?! いやさっきのはイタズラで·····」

慌ててミクを体から離す。

「イタズラでもいいの。ずっとうちだけを見てて。うちだけを触って·····?」

あ、またきましたヤンデレミクちゃん。

ほら、と彼女は僕の手を取り、彼女の胸に僕の手を当てる。

ふにっ、とかすかに手に当たる柔らかい感触。

とくん、とくんと感じる鼓動。

「こんなに大好きなんよ。愛しとるんよ·····じゃけぇ·····」

ミクの口が、何かを言いたそうにもごもごと動く。

「·····いいよ、言っても」

「ずっと一緒·····離れちゃだめ·····。だから·····」

そう言うとミクはぎゅっと僕を抱きしめる。

「·····だから·····?」

「あんたはうちのもん。誰にも渡さん。一生うちだけを見とればええんよ。」

優しいが、少し強い口調で言うミク。

「わかっていますよ、お姫様。」

ちゅ、と彼女の頬に口付けする。

「〜っ、もぉ·····///」

少し顔が赤くなるミク。

「ふふっ」

そう笑うと、僕はミクをお姫様抱っこで抱える。

「ひゃっ·····何を·····///」

「今日は寝かせないんでしょ·····?」

耳元で囁く。

「っ·····ぅん·····///」

さっきの強気な発言とは違い、売って変わったように顔を背けるミク。

「じゃあ連れてくよ」

「ぅん·····でも、搾り取ってやるから」

相変わらず強気なお姫様である。

まあどうせ攻められるととろとろになって甘い声で啼くんだけど。

ミクが攻めになるのはいつのことやら。

そんな可愛い君を、手放すわけにはいかない。

僕は君を、君は僕を一生ずっと愛し続ける。

ずっと、一緒だよ。


FIN

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ヤンデレでも好き 雪音ミク @YukineMiku

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