第4話

「レンはいつも本読んでいるよな。それ面白い?」


「面白いよ。」


「へえ。その本の面白さ、俺にも分かるように説明してよ。」


「やだよ、自分で読めばいいじゃん。」


「俺、活字無理だもん。国語の教科書でさえ眠くなる。だからレンが教えて。」


どこかでしたような会話が聞こえる。

この後私はしょうがないなってストーリーを分かりやすく説明して____。


「お前ら付き合ってんだろー!」


「レンちゃんって くんのこと好きなの?」


黒板に書かれた落書きとか毎日何回か聞かれて、毎日同じ回答をする。


「友達として好きだよ。」


それはお互いそう思ってるからだと思っていたのに。


「俺、レンのこと友達じゃなくて一人の女の子として好きだよ。」


見たことない赤らめた頬とまるで愛しいものを見るような瞳。

その瞬間この関係に亀裂が走った気がした。男女間の友情は存在すると信じて疑わなかったが存在しないのだと思い知った。




ぱちり、と目を覚ますと私はベッドに寝ていた。

嫌な夢を見た気がする。

ゆっくりと体を起こすと部屋の奥から物音がして音の鳴った方に顔を向けると、三匹の小鬼がいた。


一匹は中高生くらいの男子のような大きさ、二匹は小学生くらいの大きさの男女の双子のように見えた。


「起きた?おはよう!」


随分とフレンドリーな小鬼だ。

今からでも取って食われるのではと少し身構えながらおはようと返した。


「あんな所でなんで寝てたんだ?襲われてからじゃ遅いんだぞ?」


と年上らしき小鬼が呆れた様子で話す。


「森は危険だからもう寝ちゃだめだよ!猪とか熊に食べられちゃうからね!」


子供とはいえ一番人間を食べてそうな鬼がそんなこと言うんだ…。

なんだか自分の思う鬼像と少し、いや大分違うのかもしれない。


「あの…、あなた方は人間を襲わないんですか?」


「襲わないよ?だって襲ったりしたらまた虐められるし。」


「虐められる?」


「そう!酷いんだよ!

何にもしてないしただ生きてるだけなのに、突然豆投げつけて鬼は外!福は内!って!

オイラ達のこといっつも虐めるんだ!

襲ったりなんかしたら何されるか分からないよ!」


この世界の人間にとてつもなく某アニメのガキ大将みを感じた。

人間に福を搾取される鬼の図か。


でもね、豆美味しいし、当分食べるものに困らないから別にいいんだ!と言いながら豆を食べだした。

能天気な生き物なのかもしれない。


「紹介が遅れたな、俺の名前はフニ。

この双子は女の方がクリ、男の方がクラ。よろしくな。」


「レンって言います。よろしく。」


何故だろう。脳内で鬼のパンツの原曲にあたるイタリアの曲が思い浮かんだ。


「レンは人間だけど他の人間みたいに虐めたりしないね。なんで?」


「私はこの世界の人じゃないから、かな?

違う世界から来たみたいなんだけど。」


「ああ、今回は来たんだね!」


今回は来たという言葉が少し気になった。

検問所のお爺さんも同じようなことを言っていたからだ。前々回ぶりだと。


「その今回っていうのは?」


「分からないけど四年に一度あっちの世界から人が来るらしいんだよ。

でも四年前は来なくて八年前に女の子が来たっきりだったんだ。」


四年に一度、二月…もしかして閏年の二月にこの世界に来れるということでは無いか?という仮説が一つ立った。

そのままクラが話を続ける。


「八年前は女の子が森でカモシカに襲われそうになったのをフニお兄ちゃんが助けて、

しばらくここで一緒に暮らしてたんだけど、

ある日アメジストの魔女が家に来てあっちの世界に帰しちゃったんだよ。」


ちゃんとしたお別れしたかったのにな。

とクラは頬を膨らまし、いじけたように机の木目をくるくると指でなぞった。


アメジストの魔女がここに来たという言葉に少し期待をして


「アメジストの魔女、私も探しているんだけどここに来るかな?」


と聞いてみたがクリは


「来ないと思うよ?八年前だって十数年ぶりにここに来たって言ってたし。」


と一筋の希望を一刀両断した。


「アメジストの魔女は来るかは分からないが、

あんたの足もボロボロになっていたし暫くはここに居てもいいぜ。

寝床も食事も用意してやる。」


本当は一分でも早くアメジストの魔女に会って元の世界に帰ろうと思っていたが、

痛む足を動かしても二の舞だと思い、

しばらく小鬼達の家で過ごすことにした。


「お礼といってもこれしかないけど良かったらどうぞ。」


とレモンキャンディーを三つ渡すと、

キラキラと目を輝かせ、ご馳走だ!と狂喜乱舞する姿に、

本当にこの世界の人間にひどい仕打ちを受けているのだと思った。

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