遠い日の手紙

@manten-happiness

満天の幸福

仕事に追われる毎日を送っていた美咲は、ある日、母親の訃報を聞いた。長年、仕事に没頭し、実家に帰ることも少なかった。母親との関係は、決して良好とは言えなかった。葬儀を終え、静まり返った実家で、美咲は母親の遺品を整理していた。


そこで見つけたのは、一枚の手紙だった。宛名は美咲の名前で、封筒には懐かしい母の字が踊っていた。恐る恐る封を開けると、そこには、美咲が幼い頃の思い出が綴られていた。


「美咲へ。この手紙を読んでいるということは、私がもうこの世にいないということね。あなたはいつも忙しそうで、なかなかゆっくり話をする時間もなく、少し寂しかったのよ。でも、美咲のことはいつも応援しているからね。小さい頃のあなたは、満天の星を見上げながら、将来の夢を語ってくれたわね。あの時のあなたのキラキラした瞳を、私は今でも忘れないわ。」


手紙を読み進めるうちに、美咲の心は温かいもので満たされていった。幼い頃の記憶が鮮やかに蘇り、母親の愛情を感じた。今まで、仕事ばかりに気を取られて、母親の気持ちに気づかなかったことを深く後悔した。


手紙には、こうも書かれていた。「あなたは私にとって、かけがえのない宝物よ。どうか、これからも自分の道を進んでいってね。そして、いつか、たくさんの人に愛される幸せな家庭を築いてほしい。」


母親の言葉は、美咲の心に突き刺さった。仕事も大切だが、家族との時間をもっと大切にするべきだと気づかされた。


その日から、美咲は仕事だけでなく、家族との時間を大切にするようになった。週末には、実家に帰り、父親や兄弟とゆっくりと語り合うようになった。そして、少しずつだが、家族との絆を取り戻していく。


ある夜、美咲は、幼い頃に母親と一緒によく見上げた満天の星を見上げた。そして、心から「ありがとう」と呟いた。


母親との別れは、美咲にとって大きな出来事だった。しかし、その別れは、彼女に多くのことを教えてくれた。それは、家族の大切さ、そして、自分自身と向き合うことの大切さ。


美咲は、母親から受け継いだ愛情を胸に、これからも前を向いて生きていく。

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