第1話 株は一文字

小さい頃から、窓辺に座って外の風景を眺めるのが好きだった。家の窓台には花草がいっぱいに植えられていて、母がその植物を世話していた。陽光の下で一枚一枚の葉が輝く様子を静かに見つめながら、未来の生活を夢見ていた。そう、あの頃の未来は不確定でありながら、美しいものに満ちていた。


高校生になると、経済や金融に対する興味が芽生えた。家が裕福ではなかったため、常にお金の流れやその背後にある物語に対する好奇心が強かった。ある日、株式市場に関するニュースを見たとき、閃く数字やグラフがまるで複雑で神秘的な物語を語っているかのようだった。それが心に深く刻まれた。


高校時代は青春のときめきと未来への憧れが溢れていた。周りの同級生たちは恋愛や将来の職業について語っていた。放課後になると、女子たちで集まり、クラスの男子の話や夢見る大学生活について小声で話し合った。しかし、心の中には別の秘密があった。


ある日、親友の晓彤シャオトンが腕を絡めて聞いてきた。「小玉、気になる男子とかいる?」彼女の目は好奇心と期待にきらめいていた。


少し戸惑い、顔が幾分赤くなったものの、はっきりとした気持ちはなかった。特定の男子に心を動かされることはなかったが、晓彤のような特別な女性友達には、心が時折跳ねるような感覚があった。彼女たちの笑顔や温かさが、容易に心に触れるのだ。


あの日の夕暮れ、女生徒たちが夕陽に染まる校庭でお喋りをしていた。晓彤が隣に座り、陽光が彼女の髪に薄く金色の輝きをもたらした。彼女の声は柔らかく温かで、まるで心に光を描くようだった。


「小玉、将来は何をやりたいの?」晓彤が興味津々に尋ねた。


「経済を学びたい。将来はファイナンシャルアドバイザーか金融業界に入りたいな。」低い声で答えた。


晓彤の目が輝いた。「わあ、それはすごい夢だね!きっと叶えられるよ!」


彼女の励ましは心を鼓動させ、その瞬間、彼女の認めが何よりも大切に思えた。




上海財経大学の経済学院を選んだのは、経済運用の原理を深く学び、生活を変える方法を見つけたかったから。未来には家族にもっと良い生活を提供したいと願っている。特に、株式市場への興味が高まった年から。その年、父が家の貯金を全て株式市場に投入するという大きな決断をした。最初はまるで高く飛ぶ鷹のように希望をもたらしたが、すぐにその鷹の翼が撃ち落とされ、希望と貯金が一気に失われた。


あの夏の夜、父はリビングに座り、顔色は青ざめ、目には暗い影が映っていた。近くで見守るしかできず、母のため息と父の沈黙が交錯し、重い空気が漂っていた。その時、いつか自分の努力で運命を切り開こうと心に誓った。


夜深く、ベッドに横たわると、一つ一つの記憶が浮かんでくる。人生の波のように株式市場も変動し続ける。それは時には驚きをもたらし、時には困難を引き起こす。だが、どんな状況であっても、この未知の世界で自分の道を見つけたい。


未来への希望と株式市場への挑戦とともに、この大きなチャンスを生かし、家の状況を変え、己の能力を証明する機会だ。誰もが自分の夢と追求を抱えている。その中で、小さな秘密や未来への憧れを胸に、このキャンパスでさらなる努力を重ね、明るい未来を迎えたい。


2021年、十八歳となり、成人の一歩を踏み出した。新たな責任と自由を手にする瞬間でもあり、ついに合法的に株式口座を開設し、あの心踊る世界に足を踏み入れることができるようになった。


しかし、その年はA株市場への参入を選ばなかった。高考が終わり、緊張の連続だった高三の生活から解放される夏が訪れた。家族は高考での好成績を祝福し、特に父は誇らしげだった。


「小玉、高考ガオカオの結果は素晴らしい。次は大学生活の準備をしっかりしなきゃね。」父の顔には誇りと笑顔が溢れていた。


しかし、心の中には2015年の株災の影が消えない。一家の積蓄を全て股市に投じた父の無力感と失望の姿が、夢で何度も再現される。あの年の夏、父はリビングで青ざめた顔と暗い目を向けていた。その記憶が深く刻まれていた。


「お父さん、あの年の株災を覚えてる?」ある晩、そっと尋ねた。


「覚えてるよ、小玉。本当に辛い時期だった。」父は黙って一呼吸置いた後、低く答えた。


「後悔してる?」声に微かな震えが混ざった。


「もしかしたらね。でも、投資は常にリスクが伴う。あの時は痛い教訓だったけれど、多くを学んだよ。」父は長い溜息をついた。


2021年秋、大学のキャンパスに足を踏み入れた。新たな生活には挑戦とチャンスが満ち溢れ、毎日が学びと努力の日々だった。股市への熱意は変わらなかったが、その年は結局口座開設を先延ばしにする決断をした。


入学初日、大勢の学生で賑わうキャンパス通りに立ち、未来への期待が胸に迫った。その時に出会ったのが方芳だった。彼女は同じクラスの新入生で、明るくて周囲を瞬時に元気にさせる存在だった。


新入生歓迎会で初めて正式に出会った彼女は、白いワンピースを身にまとい、軽やかにスカートの裾を揺らしていた。黒く柔らかな髪が肩に垂れ、額にかかる前髪が清楚な顔立ちを際立たせていた。方芳の明るい目と笑顔は、まるで太陽のように輝いていた。


「こんにちは、方芳です。よろしくね。」親しみやすい声と共に握手を交わした。その後、彼女とはすぐに仲良くなり、ルームメイトにもなった。


大学では学業が最優先事項となった。多くの新入生と同じように、成績を通じて自己実現を目指した。授業では常に前列に座り、真剣に講義を聴き、ノートを取る。教授が株式市場や経済学の原理について話す度に、心の中で波が立った。


また、経済学社にも積極的に参加し、志を同じくする仲間と経済のホットトピックを議論したり、意見を交換したりした。ある日、株式市場に関するディベート大会が開かれた。講壇に立ち、激しい議論を展開する中で、自分の情熱が燃え上がるのを感じた。


部屋に帰ると、方芳が問いかけた。「小玉、そんなに株式市場に入りたいの?」


「そうだね、でももっと準備が必要だと思う。」心の中に浮かぶ複雑な感情を込めて低く答えた。


2021年から2023年まで、A株市場への参入を見送った。この期間を通じて、経済と金融に対する理解を深め、成長するための時間を取った。股市への情熱は冷めなかったが、より理性的で成熟した判断が重要だと感じた。


キャンパスには様々な夢と希望を抱えた学生が溢れている。その中で、小さな秘密と未来への憧れを胸に、不断の努力を続け、光明あふれる未来に向かって進んでいきたいと願っている。


黄金周の上海、街道は人で溢れ、観光客が絶えない。そんな中、キャンパスは普段以上に静かだった。多くの学生が旅行や帰省を選ぶ中、方芳と私は特別な予定を立てず、株式市場の勉強に時間を費やすことにした。


黄金周の初日、ベッドに横になりながらスマホを見ていると、一つの推送が目に飛び込んできた。


「各大証券会社が黄金周中も営業中!口座開設キャンペーン実施中!」


一瞬、心が大きく揺れた。詳細を読み進めると、この休日に各証券会社が「休みでも口座開設可能」なサービスを展開しているとのことだった。特にアルペイのキャンペーンは「わずか1分」で口座が開設できると謳っていた。


「これがチャンスかも。」心の中で呟いた。



午前中ずっと、そのチャンスを掴むべきか迷い続けた。過去の影はまだ残っていたが、今の自分は以前よりも成熟し、準備ができていると感じていた。深呼吸し、もう迷わないと決意。


アルペイを開き、ガイドに従って操作を進める。わずか1分で、株式口座が無事に開設された。画面に表示された「口座開設成功」の言葉に目を奪われた。


興奮と期待が高まりながらも、わずかな不安が胸をよぎる。しかし、黄金周中はA株市場が休市のため、すぐに取引を開始することはできなかった。この時間を使って、さらなる準備と学びを進めることに決めた。



パソコンを開き、証券会社の取引プラットフォームにアクセス。株の動きや分析レポートを閲覧し、表示される赤と緑の線がまるで交響楽のように見えた。陽光がキーボードに差し込み、決意をさらに温めてくれる。


図書館に足を運び、株式投資に関する書籍や専門誌を丹念に読み込んだ。メモを取り、自分だけの投資戦略とリスク管理の方法をまとめ上げた。株式市場への参入は単なる売買ではなく、深い知識と冷静な判断が求められる。これらの準備が自信に繋がり、心を安定させてくれた。


その日の午後、方芳が部屋に戻ってきた。「小玉、何を研究してるの?」と、彼女の声には好奇心と優しさが混じっていた。顔を上げて微笑み、「株式口座を開設したんだ。この数日間、市場の研究をしている」と答えた。


方芳の眼差しが輝きを増した。「それは大きな一歩ね!どの株に投資するつもりなの?」


「今は金融株とテクノロジー株を中心に研究してる。最近の動きが良さそうだから」と、心の動揺を隠すように平静を装ったが、内心では波のような興奮があった。


「そうね、金融株は政策の影響を受けやすいし、テクノロジー株の成長性も魅力的。でも、リスク分散も大事ね。すべてを一つのバスケットに入れないようにしなきゃ」と彼女は真剣に続けた。

「実は、ここ数年、仮想通貨をやってるんだ。株式市場ほど詳しくないけど、仮想通貨市場はもっと動きが激しいし、リスクも大きい」


「仮想通貨?それは確かに刺激的だね!」と驚きを隠せない。


方芳は笑って答えた。「ええ、波が大きいから、一晩で数十パーセント変動することもある。でも、将来性はとても大きいと感じてるわ」


「それはすごく冒険的だね。私は株式市場の方が合ってるかな」と自分の選択に確信を持ちつつ言った。


「どちらにしても、投資は自分の判断と策略が重要だね」と方芳は肩を軽く叩いて励ました。


株式市場を深く理解するために、模擬取引ソフトを使って練習することにした。リアルな取引はできなくても、模擬環境での経験が実際の市場操作の予行練習になる。各取引を細かく分析し、戦略を立てて結果を反省する。この練習が取引の流れを理解し、技術分析の方法を磨く助けとなった。


ある晩、資料を分析しながら机に向かっていると、心にわずかな恐れと強烈な期待が交差した。深夜、窓の外には上海の繁華さが広がり、車の流れが私の決意に寄り添っているかのようだった。


父の言葉が蘇る。「投資には常にリスクが伴う。しかし、冷静な分析と慎重な操作を学べば、この広い市場で自分の位置を見つけられる」


詳細な投資計画を立て、目標とリスク管理の戦略を設け、一歩一歩を慎重に進む決心をした。その中でも内心に燃える確固たる信念は揺るがないものだった。










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