第4話 名付けて100年分の旅

 やっぱり一華がいた。頬は赤色に染まっている。

「……ごめん。一華。」

「…別に。火沙は優しいからそんなことになるとは思ってからさ。」

「そっか。」

こうしていると、ふと昔を思い出す。

「火沙、昔お世話になった立川おばあちゃん覚えてる?」

一華も昔のことを考えてたみたいだ。

立川ばあちゃんは、近所のおばあさんで、母さんが仕事に行ってる間に小さい俺の面倒を見てくれていたのだ。うちに一華も呼んで、よく折り紙を折っていた。

「もちろん覚えてる。よく折り紙を教えてくれてた。まさかあの元気ばあさんが死ぬとは思わなかったけどな。」

俺達が小学校に上がると同時に立川ばあちゃんは老衰で亡くなった。享年92歳。立派な最期だった。

「ね。…ばあちゃんが元気な頃、私たち100歳まで生きるって誓ったのに、約束果たせそうにないな。」

肯定したくない。けど、他に言葉が見つからない。……あ!

「……いいこと考えた!!」

「ん?どうしたの?」

「夏休みだから明日一華予定空いてるっしょ?」

「?……うん、塾も辞めちゃったし。」

「ならさ!明日から冒険行こうよ!!」

「え?」

「100年分の喜びも悲しみも、怒りも、葛藤も全部詰め込んだ冒険!」

これならきっと立川のばあちゃんもにっこり笑ってみててくれるだろう

「名付けてっ!100年分の旅!!」

雲なんてなかったかのように満月は俺たちを照らしていた。

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100年分の3日間を君に クズグッズ @shoutaaaaaa

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