第3話 叫べ
俺はどうしたらいいのだろう。
今の俺には一華に寄り添う資格はないし、合わせる顔もない。
「宥人さんにきいてみるか。」
宥人さんは一華の従兄弟で昔から何かと相談に乗ってもらうことが多い。きっと一華の余命のことも知っているだろうし、適切なアドバイスもくれるだろう。
……かけてみたけど繋がらない。何かしてんのかな?
“相談があるんですけど”と送ると“1時間後にまたかけて”とメッセージが来た。とりあえず“了解です”と送っておく。
待ってる間に風呂で頭を冷やすことにしよう。
『もしもーし。聞こえてる?聞こえてたらスピーカーをオンにしといて。あと音はできるだけ高く?』
「?了解です。」
言われた通りにスピーカーをオンにして音を上げる。
『火沙?ひさしぶり〜♪高校デビュー失敗した時の相談以来かな。』
「……やっぱなんもありません。」
『アハハっ、ごめんごめん!今日はなんの相談?』
「実は…例の件で一華に怒鳴っちゃって。」
『あーね。とりあえず状況の説明を詳しくお願い。』
言われた通りに宥人さんに詳しく状況を説明した。
『じゃあ全部お前が悪くね?』
この説明に対する模範解答が出てきた。
「そうです。悪いのは俺だから接しにくくて、」
『火沙、お前…甘いよ?』
「えっ…?」
宥人さんの声色が急に低くなった。
『結局何がしたいの?やりたいこととかやるべきこととかがまとまってないのにただただ唸っても何もできないよ?』
確かに…そのとおりだ。
『お前のうち今日おばさんとおじさんいる?』
『今日は夜勤で遅くなりま…』
『なら叫べ!!お前が一華に伝えたいこと、お前のその気持ちを全部!!』
「でも団地の人の迷惑に…」
『甘ったれんなっ!!そんなんじゃ一華に合わせる顔がないんじゃねえのかよ!!』
ハッ……!!そうだ。おれは…おれは……!!
「一華っ!!ごめ――――――ん!!!」
『何に対してだ!!』
「一華がこんな目に遭うのが許せなくて!俺は怒鳴ってしまった!!」
『それがなんだ?!!』
「そんなことしても事実は曲げられないしそんなことをしても一華は優しいから自分のせいだと思って余計自分を責めるだけだ!」
『!!』
「これからはっ!!一華の隣にいることができる時間を大切にしたい!」
ハァハァハァハァ…言い切ったぁ〜!!
『…ま、及第点かな。』
「手厳しいっすよ。」
『じゃ、それを一華に伝えに行きな。』
「それはそうなんですけど、これから一華にどう接したらいいのか結局わからないんですよ。団地で部屋隣だから余計顔を合わせづらいし。……あれ?」
一華は隣の部屋にいる、そして、俺は大声で叫んだ。つまり………
「はめましたね?」
『ふへへへ。火沙、お前つくづく鈍……』
俺は通話を切って、ベランダに出た。
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