第2話 余命1ヶ月

突然の出来事だった。

たった10文字。それだけで人の心はこんなにも揺れ動くんだと、そう思った。

彼女は俺の横で、ベランダに立って、遠くを見たまま告げた。


「私の余命、1ヶ月だって。」


直感でわかる。

あ、これ本当のことだ。

急に目の前が真っ暗になった。

儚さや哀しさの混じった彼女の声は冷たく、そして鋭く俺の心に突き刺さった。


昔から仲が良かった。いわゆる幼馴染で、喧嘩したことはあれど、お互い疎遠になったり、仲がギクシャクすることもなかった。一華は典型的な優しい善人で、罰されることは何もないだろう。

……なのに神様は



横で淡々と一華が話す。

「末期のがんらしくてもうなんの手立てもないんだって。私も症状が出てて薬を飲まな……」

「………ちょっと待てよ。」

「………だから、私の寿命はっ――」

「ちゃんと聞いてた!!ちゃんと聞いてたからはっ?って言ったんだ!」

思わず声を荒げる。

「なんでお前がそんなことにならなきゃ……」

一華の顔が見える。怯えている。一華は優しいからきっと自分のせいにしてしまうだろう。俺が今できることは、寄り添うことだけだ。でも俺は…

「………悪い。ちょっと部屋に戻るわ。」

一華にそう告げて、ベランダから自分の部屋に戻る。

今の俺には一華に寄り添う資格がないだろう。

残り1ヶ月。一華にとって俺といるより友達といたほうがいいだろう。

空には雲が広がっていて、月は見えなかった。

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