Captivity

第30話

高校生の頃、入学式の手伝いで借り出されていた私は、入学式で実来心晴と出会う。



といっても私は、堂々と入学式の手伝いに遅刻した。




「叶恵!お前はこんな日にも遅刻するのか!」



体育館の受付で、新入生の胸元につける花を渡す係だった私。すでに新入生は全員席に着席している状態で、式の始まる10分前だった。



「たく!スカートも短いわネイルも化粧もしてるわ!モデルかなんか知らんがマナーも守れないようじゃ世間の恥だぞ!」


「在校生代表、恥で〜す」


「叶恵ッ!!」



週3で先生に怒鳴れるのは当たり前。仮病使って休んだり早退するのも当たり前。



高校行ってない友達と遊んだり、適当にネッ友とホテル行ったり。単純に撮影で休む日もあったけど、不純な動機で学校行かないことの方が多かった。



何が楽しい?皆綺麗に列つくって決められた時間に勉強して掃除して。起立、礼って軍隊かよ。黒板必要?教科書ありゃよくない?



集団色に染まる日常に、生意気にも理不尽を感じていた高校生だった。


  

でもモデル業は違う。



完璧なスタイルと、ある程度の顔面で集団色から逸脱することができる。



承認欲求にも似た世界線で活躍したかった私は、好きだった雑誌『RUNRU』の読者モデルに興味本位で応募してみたのだ。



そしたら応募理由に目を留められ運良く合格。撮影現場と誌面上が私の全てを正当化してくれる居場所となった。



本来の自分の姿はモデルであるのだと、なんの根拠もなくモデルであることに誇りを持っていた。



自分だけの居場所が欲しいだなんてわがままかもしれない。でもうちは5人兄妹で両親ともに小さな食堂を営んでるから、目立つことしないと相手にしてもらえなかったんだよ。



まあモデルになろうと思った決定的な理由は他にもあるんだけど。



ちょうど4月から専属モデルになったばかりで、浮かれてたってのは確かにある。



でも悪いけど私は遅刻はしたことがなかった。学校でも撮影現場でも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る