第31話
専属になりたかったし、撮影現場で時間厳守だったせいか学校でも遅刻するという頭はなかった。これだけは守っていたはずなのに、先生はあたかも私が毎回遅刻してるような口調でさ。
どーせ誰も見てないから、仕方ねえかって
思ってたんだけど。
「あの…先生。」
気まずそうに、私と先生の空間に割って入ってきた美少年。
まだその頃は私と同じくらいの背丈で、見た瞬間造形物のような少年だと思った。
その時を鮮明に覚えている。すでに散ってしまった桜の花びらが地面から舞い上がるあざと優艶なシチュエーション。
ダークチョコの前髪から除く蒼碧は、舞うくすんだ花びらを映さず、なんでか呆気にとられる私を映していた。そんなに見られたら苦しくなるってくらい、純麗な瞳に穏やかな唇がちょんとついてる造形物。
ただし綺麗なだけで性的魅力はないから私がどうにかしてやらなきゃって。ああそっか。そう思っている時点で性的魅力を感じていたのかもしれない。
「僕、その先輩が公園で、人を助けていたのをみました。」
「……ええと、君は?」
「新入生代表の、実来心晴です。」
「ああ!」
実来君は新入生代表の挨拶をすることになっていて、入試の成績がトップだったということを知った。
先生はすぐに実来君の言葉に取り合って、実来君が朝目撃した一部始終を話してくれた。
私が登校中に通る公園で、ベンチで酔っぱらって倒れていた女の人を大通りでタクシーに乗せたことを。
彼は初めての学び舎に足を踏み入れたばかりの新1年生で、私みたいなギャルが先生に叱られている場面にも果敢に入って助けてくれた。
好きにならないわけが、ない。
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