第25話

「あの二人、マジで付き合う5秒前って感じじゃね?」



香椎が、床にギギッと引きずる音を鳴らし椅子を引く。隣に座るなり、私を下から煽るように見る。



「もしかしたら、もう付き合ってんじゃない?」



もう崖から飛び降りた女からは口惜しみも出やしないよ。 



ほんとに付き合ってたら、真田さんに私との浮気現場の画像でも提示してやろうかなとは思ってますけど?



「さすがに付き合ってたらお前との関係を断ち切るだろ。実来心晴だぞ?」


「真面目君だから浮気はしないって言いたいの?」

 

「同じ店舗の中ではさすがに浮気できんだろー。他の店舗ならまだしもさあ。」


「そういう意味かい。」


  

同じ店舗だって浮気を浮気と思わないサイコパスならできるはず。でも私の知る実来心晴はサイコパスでは……ない。   



ちょっと自信がない。だってさっきまで私の脚を足で撫でてきたし、ゲームでセックスをする男だしな。



ずーんってなった。


 

「お前もうかうかしてると実来を取られちまうぞ?」

 

「……いや、取られるもなにも。私には関係ないし」


「俺もつなぎ着たグラマラスな女整備士に奪われてえ。」


「具体的で分かりやすいな。」



具体的願望を公言する香椎が、私の前に置かれた弁当に勝手に手をつける。



で、勝手に包みを開けるからこの男のデリカシーを問いたい。

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