第23話

「…ほら、この間朋政コアラが言ってたオーストラリア輸出500台の件。そのうちの300台は俺が抑えといたから。」


「……え、300台も?!」


「ま、実際の価格はコアラと商談次第だけどな。」



まだコアラとの話は先週のことだ。



それが週が開けたばかりの今日までに、すでに半分以上も確保したというのか、やるじゃん香椎課長様。



「す、すごくない?」


「俺だもん。」


「そ、っか。」


「って納得すんなよ。他店の在庫かき集めただけだって。」

 


あ、会社では敬語を貫いていたのに。驚きすぎて素がでちゃった。



「……なあ、どうした?なんか体調悪い?」


「…え?」


「いつものお前じゃないわ。」

 


香椎が、私の頬に手の甲を添える。



熱を帯びているのが香椎にバレバレで。でもね、この火照りはあんたのせいじゃないんだわ。



「……あんま無理すんなよ?お前がしおらしく仕事してても誰も喜びゃしねえって。」



香椎が私の肩を軽く叩いて。実来君に一瞥を投げる。


  

気のせいだろうか。それを咎めるかのように、実来君の足が私のふくらはぎをやんわりと這う。彼の蒼碧の瞳は、恐らく執拗なほど私に注がれていることだろう。



全身が、いや内部がゆらぐ。羞恥と屈辱のコンボを与える実来心晴の足が、すねに沿って優艶に描く。初めて彼とセックスした時よりも恥ずかしく思うのは、すぐ傍に香椎がいるせいか。



緊張も伴って実来君の方を見れないけれど、そうちらつく視界が雰囲気で感じ取れと私の脳に命を下す。



うちの事務員は専用の制服のため、膝丈のタイトスカートを履いている。ストッキング越しとはいえ、変な気分になるのは色欲アレルギーからくるアナフィラキシーのせいだろうか。



この男。そうまで私を辱めて愉しいか。

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