第22話
目の前に座る実来君が綺麗な瞳で私を睨んで、弁当の蓋を閉めて包みを締め始める。そして私の方へと寄せてきた。どうやら受け取ってはもらえないらしい。交渉決裂だ。
「先輩、誠意ってご存知ですか。」
「はい。どことなく。」
「キット誠意自体がカットされてるんですよ。」
「はい。いまいちキットカットから離れられませんね。」
方向性を間違えた節操のない元ヤリマンは、上目遣いで実来君に応戦するも、素早く「ウザい」とカットされてしまった。M欲を煽られた私を今すぐ殺ってくれ。
そんな私の誠意が伝わらない謝罪をしていると、休憩室にもっと節操のない輩が現れた。
「ああ、里……叶恵。これ、こないだ言ってた中古車リストな。」
香椎が数枚の用紙を手にし、私の元にやってくる。メールでくれればいいのに。と思い香椎を怪訝に見つめると、目の前にバサリと用紙を置かれた。
エクセルの枠に収めもしない車種、年式、店頭価格が載る雑な中古車リスト。ってまた新たな仕事?と思っている数瞬も待てないのだろうか、色欲魔が机の下でちょっかいをかけてくる。
多分、香椎が来るほんの数秒前からだったと思う。目の前に座る実来君の足が、私の足をさすっている。
靴を脱いだ靴下の感触。オフィス用サンダルで露わになる私の足首から足の甲を、いったりきたり。
靴下の癖に、中で器用に足の指をばらけさせているのが分かる。
「な、んの……リスト、ですか?」
自分の、途切れてしまう言葉が憎い。
たかが美少年に、たかが足の指に惑わされる節操のない私。香椎の顔が、見れない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます