第20話

共演者であり主演である朋政朱朗は、当時まだ17歳。



子役時代からの人気俳優で、ちょっとお近付きになりたいとビッチ心で連絡先を聞いただけなのに。テーマパークに行こうと誘われて、私は俳優の恋人というステータスにあやかれると浮かれに浮かれて。



蓋を開けてみたら、実は同じ映画の主演女優である風音星來かざとせいらとできていたらしく。つまり私は、朋政朱朗が風音星來の嫉妬を煽るための当て馬ないし捨てゴマにすぎなかった。

 


スクープ写真が雑誌に掲載されて、事務所に怒られ、朋政朱朗の事務所からも圧力文書が届いて映画を降板。



助けを求めようと朋政朱朗に連絡したら、これだ。 



「ごめんねリカちゃん!俺クズだけど、本命は星來だけなの!」 



クズ俳優にもクズなりに本命がいて、私は彼に見捨てられ結果的に事務所を自主退所した。



あの時は本当に、朋政朱朗を刺したい気持ちでいっぱいだった。



でも今思えば、私も実来君に同じことをしていたのかもしれない。



芸能という職を失った度量は違えど、私が軽率に誘ったワンナイトが、当時付き合っていた彼女と別れさせてしまったのだから。



しかも高校1年生だった実来君は、あの時私に神妙な面持ちで「責任を取ってほしい。」と話を持ちかけてきた。



高校3年生だった私は、「はは。ただのワンナイトだからムリ。」と、彼の恋心を驚くほどチープなものとして片付けてしまったのだ。



実来君が私に復讐したいと思うのも無理はない。



一度、マジな謝罪を試みた方がいいかもしれない。取り合ってくれるかどうかは知らんけど。

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