第19話

「ってことなんで!近いうちにまた商談しにいくからリカちゃん!」


「ええーーー……それまでに仕入れルート探しとけってことですか?!」 


「そういうこと。」



中古車部の課長か営業に頼めよ。



そうは言えない自分が腹立たしい。なんせ中古車部の課長はやる気がない。営業は2人しかおらず、ギリギリの人数で手一杯。営業事務は私を含め2人で、私の方が先輩だ。



中古車部の営業事務は、事務仕事に接客をしながら仕入先の開拓もしなければならない。だから離職が激しいのだ。




ボスコアラが私に、“朋政青司ともまさあおし”と書かれた名刺を渡してきて、ウィンクする。余計な動作にイラついて、思わず舌打ちが出た。



とっとと忘れたい“朋政”という苗字を再び思い出すこととなった元凶に、細目で睨みつければ。元凶であるコアラは薄笑いを浮かべてるからコアラ好かん。





芸名、叶恵リカ。色素の薄いベージュブラウンの髪。見た目に見合う軽さで名前をカタカナで売っていた私。15歳で『RUNRU』の読者モデルに、17歳で専属になってそこから徐々に露出が増えていった。



しかし20歳の時、一緒にテーマパークに行ってスクープ写真を撮られた“朋政朱朗ともまさあろう”という俳優のせいで、私は初めての映画を降板されたのだ。



脇役とはいえ、恋愛映画『淡色と常套句』のオファーがきた時はまさに天にも登る気持ちだった。

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