第14話

「それにしてもさ、香椎は課長なのにその後輩君のゲームを黙って見過ごしてていいの?カンペキなハラスメントじゃん。」



みちるが明太子多めの筑前煮をカウンターに置いてくれた。明太子と人参と絹さやの彩りが茶色い煮物を引き立てているのに、なんでか茶色い鶏肉が一番うまそうに見えて仕方がない。ご飯くれ。



「べっつに相互的満足感が得られてんならハラスメントじゃねーじゃん。」


「いや、満足感が得られてるわけじゃないけど。」


「それに実来君に抜けられると困るのよ。あれがうちの数字上げてるようなもんだし。」


      

それは間違いなく否定できない。



彼は新車だけでなく、高値でも売れる中古車に目をつけ、新車購入希望者にも中古車を売っている。商売上がったり。支店としては県内でもトップに躍り出ている。



そのお陰で、課長である香椎の株も上がったりだ。



「ちょっと、勝手に私の甘酒焼酎飲まないでよ。」


「はあ?お前、誰のお陰で働けてると思ってんの?」


「なんだって私は後輩にセクハラされて上司にパワハラされてんだろ。」


「恨むなら自分の人生を恨めー。」



モデル活動をしながら短大をぎりぎり卒業していた私。21歳で事務所を退所して、真っ当な仕事に就けず路頭に迷っていたところを助けてくれたのがみちるだった。

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