第7話

舌を吸われて、舌で舌を絡み取られて。口内へゆわりと侵入する。ぬるりと脳髄が一気に堕落しダメになる。ただ、この瞬間がいつも酷くさめざめと甘々。


   

「“だから勘違いする。そんな甘いキスされると、コイツ、私を好きなんじゃないかって――――”」


「…………」


「今、そう思いましたよね?」


「……ななな、なんて自意識の過剰さ。」


「どうかご安心を。僕、ヤリマンに興味ないんで。」


「どうぞご安心を。私、ヤリマンでしたから。」   



その安心を相互提供する証拠に、私たちはやるだけやったらおうちに帰る。一緒にご飯?ワインバー?台湾カフェ?



ホテルに直行、ホテルから直帰。



こんなに単純明快な関係、近藤勇と土方歳三、シャーロック・ホームズとワトソンの関係よりも明白だ。因みにBLには興味ない。




「先輩、ちょっと足あげて」


「…………」


「おいババア。足。あ・げ・て。」


 

ババアを殺り終わった後の彼は、酷く冷めきった瞳をくすぶらせている。にも関わらず、事後は必ずと言っていいほど私の身体を綺麗に磨いてくれるのだ。これで古い角質がはがれ落ちて若返れば文句なし。



シャワーを浴びるからいいのに。この言葉が出ない。



悪夢君に酷使され呼吸法と自律神経を整えるのに必死な私。アニメ1話分ほどの時間は言動力を失う。



彼の前世は介護福祉士だったのか。このまま下の世話までさせたら私の人としての人生は終わる。



この事後処理の扱われ方が、女の恋情を左右させるのだ。ヤリマンだった私だから分かる。本当に身体だけの関係ならば、こんなに丹念に、タオルをお湯にまで湿らせて拭いてくれることは絶対に有り得ない。 



私には興味ないと公言しておきながら、私の扱いっぷりが雑とは言い切れない実来君。だから。可愛くないとも言い切れず。

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