第4話

「イメージガタ落ちで売れなくなって自主退所しただけですよ。都落ちってやつです。」   



新車部から歩いてきたあの男、実来心晴みらいこはる26歳。



喫煙者たちに笑顔を向け、そう私の黒歴史を正した。ありがとうゴザイマス。



「えーなあんだ。AV出身なら一度くらいやらしてくれっかと思ったけど。」


「ただの都落ちかあ。」


「叶恵さんはご覧の通り根っからの純情乙女なんで。あれは相当身持ち硬いよ。って課長が言ってましたけど。」  



ダークな蒼碧せいへきの瞳が、自販機の影に隠れる私に視線を送る。慌てて身体ごと自販機に陰らせる。



今日もダークチョコ色の髪が綺麗にセンター分けを作り、さらりと掻き上げる仕草に私の胃腸が悲鳴を上げる。



胃腸がムカムカする。ソルマックでさっぱり爽やかに解消できるものなら、いくらでも大金つぎこむし。



「まあいつも髪一つしばりで黒縁メガネだし。美人でスタイルいいけど地方止まりってやつかあ。」

  

「ある意味手え出しやすいけどな。」


 

28歳は女の崖っぷちだと言うけれど。



読者モデルから専属モデルに成り上がり、一時はバラエティにも出演。映画の脇役に抜擢されて、そこから若手俳優とのスクープ写真で映画を降板。



批判に苦情の絶えない事務所に、これ以上迷惑をかけられないと自ら退所。


 

私はもう崖から飛び降りた事後だというのに。


 

この男はあざ笑うように私とセックスをするのだ。

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