第2話

『それではこれより、Aレーンより順にスタート致します。』



オークションがスタートを切り、画面が秒速で切り替わっていく。


 

『Aレーン1号車スタート、2号車スタート、3号車スター…………』



しかしチャットの軽やかな可愛らしい効果音は、どうも私の心臓には悪いらしく。

 


《売るなら4桁で願います。》


〈犯罪者になれと?〉


《被害者と加害者の熱烈なつり橋効果も悪くないですね。》



一秒も気を抜けないこの状況。余裕でメッセージを送りつけてくる男の絶妙な美笑が目に浮かぶよう。私も冷静な自分をみせつけるように、彼に送り返す。 


   

負けられない戦いが、ここにある――――




〈つり橋効果は長続きしないそうですよ、実来みらい君。〉


《それは僕の器量によるのでは。》




Gレーン2号車――――――――



――――――きた



そう思ってからおよそ12秒後。



【以下の金額で落札されました。】



【630万円】 




うそでしょ。正規価格650万円なのに?!その仕入れ値に点検修理費つけていくらで売る気なの?

 


パンデミックの影響により世界に及ぼされている深刻な問題、半導体不足。今や新車の納入に二年はかかるといわれている。



希少車なら尚のこと。今や中古車も新車並みの価格として販売されているのだ。解消されるのはいつになることやら。



《期待していいですよ。里夏りか先輩。》  



復讐野郎との関係が解消されるのはいつになることだろう。

  


この男、私を絆してなんになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る