第3話 デリバリーじゃないよ

不思議な感じ。

今、素性の怪しいおねえさんが、僕の家のキッチンで料理を作っている。


「すみませーん。限界なので、つまみ食いしながら料理しまーす。」


「どーぞ。遠慮なくー。」

健太郎は、呆れたとも諦めとも何とも言えない返答。


「あ!ーーーー!!!!」


「どっ、どうしたんですか!?」

おねえさんの、腹の底からの叫び声に驚いた健太郎は、

キッチンへ駆け込むと、、、。


「玉子の割り方が書いていない!!」


「へぇ!?」


「だって、親子丼のレシピに玉子の割り方が書いていない!」


「、、、、ニャイさんが集めた地球の情報は、

肝心なところが抜けてますね。

それに、どこのお嬢様の設定なんですか、

玉子が割れないなんて。

26年の人生経験の記憶の中には無いんですか。」

僕は腕まくりをして、流し台でざっと手を洗う。


「僕も決して上手ではないですけど、」

片手でコンコン、両手でパカっ。


それを見てノケ反るように顔を上げるおねえさん。

「すんごぉーい!ありがとうございます!

料理ができる男の人って、素敵です。

結婚を考えてしまいますね。」


「今、僕を相手に、そういうセリフはどこから出てくるんですかぁぁ。

しかも玉子割っただけですよ。

やっぱりちょっと設定がおかしく無いですか?」


「恋する気持ちに理屈は要らないのよ。」


「だから、それ、おかしいですって。」


「私が嫌いなんですか!?」

と言いながら、おねえさんは、マッハの速度で健太郎の背中に抱きつく。


酔っ払った末の3P経験あり、でも最後までできず、

結局、童貞のままの健太郎はドギマギ!

「ちょっと、おねえさん、何ですか!?」


「女の処世術です。」


「それ違いますってぇ!」







「あ、リビングの灯り、点いている。」

玄関に向かっていた進行方向を

リビングから突き出たウッドデッキに変更する女の子。

健太郎とは幼馴染の蓑 美乃花(みの みのか)。

家族ぐるみで仲良しなので、

毎度のバーベキューでお馴染みのウッドデッキに上がる。

網戸を開けて、リビングに侵入。

「こんばんわぁ!健太郎いますかぁ!?」


健太郎の背中に抱きつく女性を認識する。

一瞬、健太郎のお母さんかと思ったが、

明らかに違うと気付いた美乃花。

つやつやロングヘアーをポニテにして、

ファッションモデルのようなルックス、

ダークネイビーのパンツスーツに、

エプロン!?!?

表情は思いっきり健太郎に甘えている。


「ごめん、また来るね。」

実態を察したつもりの美乃花は、回れ右する。


「待って!違うんだよ、美乃花!助けて!」


「えっ、何!?」

脚が止まる美乃花。

振り返って、二人を改めて見てみると、

困惑顔の健太郎に気付いた。


「ちょっとおねえさん、私の健太郎に何しているんですか!?」

ちょっとカマをかけた美乃花。


「あら、あなたはあの時の美乃花さんね。

初めまして。」


「わ、私を知ってるの?

ど、どこかでお会いしましたっけ?

あれ、でも、初めまして、なの?」


「えぇ、初めまして。

でも、小さい時のから、ずーっと見せてもらいました。」

「あの時のもね。」

思わせぶりなおねえさん。


「ちょっとやめて。」

おねえさんに小声で話す健太郎。

「《ここで3Pの話が出て美乃花に聞かれると、

事態の収拾がつかなくなるよぉ!!!》」


「健太郎、アルバム見せたの?」


「見せていない。いいや、でもそんな感じ。」


おねえさんを改めて観察する美乃花。

「で、この人、誰!?」


「ぇえっとぉ、、、、。」

健太郎は、どこまで話すべきか、考えがまとまらない。


「私は、ニャイでーす。よろしくね。」

まだ背中にくっついたままのおねえさん。


「ニャイって、源氏名!?

うぅわぁ、健太郎、いやらし!最っつ低!」


「ちょっと待った。

美乃花の想像の方がいやらしいぞ!」


「違うの?」


「どーかしらぁ。」

おねえさんが割り込む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る