第34話 来訪者(にゃ)
入江は【
その入江の全身は微に光っている。
そして、部屋にあった月見草も。
ドッグワゥァァァァァァァン!
ドームが揺れる。
透明なドームの向こう側に
「入江っちぃ~! 今、いまなんか……」
入江ほど正確にではないけれども
「はい、【
バッァァァァァン!
横開きの扉を無理やりこじ開けた
「ふむ、ふむふむふむふむ! いま、今なんか信号の気配のようなものが……」
「はい、【
コンっコンコンコンコン、ドガッ! ドガドガドガガガガガ!
「ちょっと~!? 今、今さぁ~! っていうか何このドーム! どっから入んの!?」
ドームに蹴りを入れまくりながら田中さんが今まで見たことがないよな焦りの表情を浮かべている。
ぷしゅ~。
リンが扉を開けてみんなを迎え入れる。
「で……」
横長の木のデスクを囲んで俺たちは向かい合う。
「ウチの『H-SKRLΘ-N9』と連絡取れたってのかよ!?」
「ふむ、我が母船『MNML-7.0』からは超神経インパルス信号が送られるはず。それを入江が受け取れるとも思えないが」
「4.2元振動分子光波! 『CUBEX-2』からの分子光波きた!? ねぇって!?」
一斉に入江に食いつく3人。
なんちゃらかんちゃらってのは、みんなの母船の名前っぽい。
意外とワンパターンな名前だよな。
名前っていうか型番っぽいし。
「え~っと、受信したのは重力波によるメッセージ、です」
入江の体に微かに残ってた薄い光が言い終わると同時に消える。
「そうかぁ~……。『ARC-SYLFR32』は重力波信号だもんなぁ~……」
「ふむ、たしかに【超斜重力波信号】なら次元を超えることも可能、か」
「で、なんて言ってたわけ!? 帰還の方法聞いた!?」
「あの……その、あまりにも微弱で……なんて言ってるかまでは……」
露骨にがっかりした顔をする三人。
『はぁ~…………』
深いため息が埋め尽くす中、思い出したかのように入江が漏らす。
「あっ、でも一言だけ聞こえましたよ」
『なにっ!?(ガタタッ!)』
「はい、【送る】って言ってたような気が……」
「は? 送る?」
「はい」
「それだけ?」
「はい……」
「なにを送るって?」
「さぁ……」
「いつ届くわけ?」
「さぁ……?」
『はぁ~…………』
再びため息がドームの中を埋め尽くし、もうみんなくたくただったこともあって各自部屋に解散することとなった。
田中さんは三階角部屋に。
入江は屋上ドーム部屋に。
そして俺は二階の階段横の部屋に自室を決めた。
久々の広い風呂と、リンの作った備蓄フル活用の夕食を堪能した後、ふかふかのお布団に包まれた俺は秒で眠りに落ちた。
「ん……」
寝苦しさに目を覚ます。
窓の外はまだ夜。
胸の上が熱い。
(なんだ……?)
もふっ……。
(もふ……?)
もふもふもふ。
ん?
温かいもふもふな
「んミャン♪」
ね、猫……?
「今、ワチのことを『猫』と思ったにゃ?」
「ね、猫が喋った!?」
「だぁ~から猫じゃないにゃ」
「でも『にゃ』って」
「『にゃ』はあれにゃ、キャラ付けにゃ」
「は? キャラ?」
「そう、なにを隠そうワチは【MaO・B1101・Dnt】、地球に最初に適応した最古の異星人にゃ」
「最古の異星人ん~?」
「にゃ、そうにゃ。ワチのことを【マオ】と呼ぶことを許すにゃ」
「マオ……ちゃん?」
「『ちゃん』はいらないにゃ。ま、なんにしても……」
もふもふな気長猫、マオはペロリと俺の指を舐めると。
「ターゲット【
と、嬉しそうにゴロゴロ鳴いた。
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