第3話 エイリアンは俺が好き
「なるほど、つまり俺は子供の頃に宇宙船に拐われて改造手術を施されかけてたんだけど、元々地球人が持っていない【宇宙遺伝子ソロンα】と地球人しか持たない【万能遺伝子バースΩ】を持っていた超希少種だったため、手術を逃れて観測対象として各星の宇宙人たちから見張られてた、俺はってわけなんだ?」
こくり×3。
意味わかんね~!
なんだよ、そのソロンなんちゃらとかバースなんちゃらとか!
という心の叫び声をぐっとこらえて、俺は冷静に疑問点を聞いてみちゃう。
だって
「うん、一万光年歩譲って仮にそれが事実だとして……俺は改造手術された記憶なんかないんだけど?」
「記憶は消したからな」
「そっか、消したんだ」
消したんだ……。
「ああ、大変だったぞ。なんせ【宇宙遺伝子ソロンα】と【万能遺伝子バースΩ】を天然で併せ持つ全宇宙唯一の生命体だからな。抵抗力が高いのなんの」
「で! そんなソラが18歳を迎える時! 再来年の3月31日! お前の中の天然物の【ソロンα】と【バースΩ】が結びつくその日! なにかが起こる!」
「その時なにが起きるのか。それを近くから観測するのが私達の役目」
「もし災厄を振りまくようだったらウチがソラを殺すんだけどな! がはは!」
お~い?
「ザ・エイリアン☆」なゼノモーフ型に殺すって言われちゃったよ~?
こわっ。卵とか植え付けられそう。
「アマツキくんを殺させなんか絶対にしません! 私が守ります!」
おお、入江ありがたい。
ただ、唯一庇ってくれるのが一番弱っちそうなグレイ型ってのがな……。
さすがにちょっと心もとない。
「ふむ、しかしその役目も攻撃の影響で途絶えてしまいそうだ」
「攻撃?」
「ああ、超次元攻撃。我々は次元を超えた」
「は? 次元を超えた? なに?」
「端的に言うと、我々は『別の世界に来た』」
「別の世界?」
言われてみれば。
さっきまで教室にいたはずなのに、ここは外。
しかも草原。
風がぴゅ~。
草がそよそよ。
空気の感じもカラッとしててなんか違う。
「ここどこ?」
「わからん」
「そっか、わかんないんだ」
「何者からの攻撃なのかも不明」
ふふっ、わからないことだらけ。
逆に笑けてきた。
「にしても、ウチが【
「いえ、アマツキくんが助かったのは私がアンチ重力波シールドを張ったからです」
「ふむ、私が
「あ? んだとテメェ!?」
「ふむ? クマムシ以下の【
「まぁまぁ! みんなの力が合わさって一命をとりとめたってことで(汗)」
争う2人と仲裁する入江。
入江がいてくれてよかった。
ありがとう。
姿、めっちゃメタリックだけど。
緑色の血とか出しそうな感じだけど。
う~ん、しかしわからんことだらけだ。
けどさ、助けてくれたってんならさ。
礼は言わないとな、うん。
人として。
「え~っと、キミら3人が俺を守ってたってこと……なんだよね? ありがとう」
三人の顔がパァと輝く。
「ありがとう!? ありがとうって言ってもらえた! アマツキくんから! あのアマツキくんからありがとうって!」
「お、おう……! つってもウチは任務を守っただけだからな! か、勘違いすんなよ!?」
「むふふ……まさか貴様に褒めてもらえる日が来るとは……。今までろくに口も聞いてくれなかったのに……。意外と嬉しいものだな、貴様に褒められるというのは……むふふ……」
右から順に素直、ツンデレ、こじらせ。
そんな感じのリアクション。
なんか……思ってたのと違う。
もっと血の通ってない恐ろしいエイリアンと思ってたんだけど……なんというか、ちょっと人間臭さを感じる。
「でもさ、命がけで俺を守るだなんて任務みたいに言ってるけど、本当は嫌なんじゃない?」
『まさか!!×3』
「アマツキくん!? 私がいかに厳しい訓練に耐えて任務に就いたと思ってるの!?」
「この任務につくために倒してきた同胞の数は千を下らねぇぜ!」
「ふむ、中国の科挙を知っているか? 私は、その数京倍は難しい試験をくぐり抜けてこの任務を勝ちとったのだぞ? 嫌どころか、むしろノリノリだ」
ノリノリなんだ……。
「じゃあ、みんな好きで俺を観測してるってこと?」
『え……?』
3人は異一瞬息をつまらせたあと。
『好きだ!!×3』
と大声で叫んだ。
えぇ……? なにもそんな大声で……。
はぁ~、みんなそんなに『任務が』好きなんだねぇ〜。
「ふむ、ところでここに来てるのは私たちだけではないぞ」
「え?」
もぞっ。
なにかが俺の頭の中で動く。
「ふわぁ~!」
ぴょい~ん!
俺の頭の中──正確には髪の中から、ちっちゃい女の子が飛び出してきた。
その正体は──。
「た、田中さんっ!?」
田中さん。
超絶キラキラ美少女。
陽キャ・オブ・陽キャ。
しかも──
そんな手のひらサイズ美少女「田中さん」が、制服姿のまま宙に浮いている。
「あれ~? ここどこ~? ちょ……やだ! 観測対象【
「えと……田中さんもエイリアン、だったり……するの?」
「え!? そうだけど!? てか、なんで知ってるの~!? あれ……っていうかなんか……」
田中さんは怪訝そうな顔を見せると、ぴゅ~っと真上に飛んでいった。
ふふっ、田中さん飛べるんだ。
ちっちゃいうえに飛べるんだ。
もう笑うしかない。
あれか? これ、「低身長型エイリアン」ってやつか?
ちな、田中さんの制服の中丸見え。
なんだけど、すでに遠くに飛んだフュギュアサイズ田中さんはすでに点にしか見えない。悲しみ。
「なんか、あっちで誰か襲われてるんだけど~!?」
襲われてる?
耳をすませば。
たしかに聞こえる。
キンキン、キャーキャー、グルルル的な音。
「とりあえず、ここに生物はいるようですね」
「喧嘩か!? それならウチに任せろし!」
「ふむ、現住生物の調査へと向かうとするか」
「よ~し、みんなで人助けしちゃお~☆」
こうして。
グレイ型。
ゼノモーフ型。
ドクター型。
低身長型。
の4人のエイリアンと共に、俺は得体のしれない世界で人助けへと向かうのだった。
「アマツキくん、早く!」
グレイ型エイリアン入江が俺に声を掛ける。
その姿に入江が人だった頃のお嬢様系美少女の面影が重なる。
トクンっ、と心臓が跳ねた。
気がついたら、俺もみんなと一緒に走り出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます