第2話 3人のエイリアン

 俺が彼女たちをエイリアンと断言した理由。

 それは、彼女たちがにエイリアンだったからだ。

 どうなのか。

 一人ずつ確認していくとしよう。


 ■ 入江だったもの。

   グレイ型エイリアン。

   あの銀色で金属っぽいやつ。

   あの両手を繋がれてるやつ。


 ■ 是野ぜのだったもの。

   ゼノモーフ型エイリアン。

   あの映画『エイリアン』まんまのやつ。

   後頭部長いやつ。


 ■ ひじりだったもの。

   ドクター型エイリアン。

   人間を宇宙船の中で改造手術するやつ。

   ソウルジェム系魔法少女アニメに出てきそうなやつ。


 このように、三者三様見事にエイリアン。

 これがエイリアンじゃなくて何がエイリアン? って感じ。

 そんな彼女たちも、自分の姿が変わっていることに気がついた様子。


「あっ……」

「うおっ!?」

「ほぅ、なるほど……?」


 あれ、意外とリアクションが薄い。

 でも、どうやら喋れるみたい。

 う~ん、なら……声を、かけて……みるかぁ。


「これって……どういうこと?」


 アバウト〜。


「光学迷彩が解けてますね」

形態フォームが人型に戻らねぇ!」

「ふむ、この次元では私の外壁模倣ウォールイミテーションが破られるのか」


 よくわらない厨二っぽいワードを口にしてる。

 厨二っぽいっていうか、SF。

 SFっていうか、三人の姿はSFのエイリアンなわけで。

 なわけなんだけど。

 なんだけどさ。

 3人の話し方はさ……美少女だった時のまんま、なわけで。


「え~と……3人は、なんでそんなに平然としてるわけ?」


 一瞬、「3人」か「3匹」かで迷ったけど「人」でいくことにした。

 だってエイリアンも異星「人」だもんね。


「平然というよりも『あぁ、バレてしまったか』という感じです」

「あちゃ~、【甲殻こうかく形態モードだけは見られたくなかったな~」

「ふむ、これは太陽系監視規則891条に抵触するな。観測対象への物理的接触。そして我々の正体を知られてしまう、と。……困った。このままじゃ太陽系包囲連邦軍軍法会議ものだぞ」


 お嬢様系だった、入江杏いりえあん

 黒ギャルだった、是野茂初布ぜのもうふ

 クール系だった、聖麗ひじりれい

 各々が人間時代のキャラクターを残したまま、エイリアン姿でなにか言ってる。


「えと、バレたってどういうこと? てかエイリアン? エイリアンで合ってるの、これ?」


 ゼノモーフ型エイリアン是野茂初布ぜのもうふが、頭をポリポリと掻きながら答える。


「ん~、なんでっつっても元々異星人だからなぁ、ウチら」


 グレイ型エイリアン入江杏いりえあんが続ける。


「あっ、でもアマツキくん! 私達のことをひと目で【異星人】ってわかってくれたんですね!」


 ドクター型エイリアン聖麗ひじりれいが冷たい口調で褒めそやす。


「ふむ、怖がってる様子はない、か。さすがは【超壁者トランスセンデンサー】。やはり只者ではないな」


 ん? んん?


「もっと説明して?」


 俺に今一番必要なものは説明。

 それは間違いない。


「説明? ま、いいか~! もうバレたしな! え~っと、うちらは【にえ】を……」

「私達は【希望ホープ】を……」

「だから【超壁者トランスセンデンサー】たるお前をだな……」


「スト~ップ! その【にえ】、【希望ホープ】、【超壁者トランスセンデンサー】ってのは俺のこと?」


 こくり。

 素直にうなずく三人。

 う~ん、【希望ホープ】と【超壁者トランスセンデンサー】。

 これはまぁいい。



 【にえ】。



 これはちょっと……穏やかじゃないなぁ。


「とりあえず呼び方は一個にまとめてくれる? 混乱するし」


「じゃあ【希望ホープ】で」

「【にえ】」

「【超壁者トランスセンデンサー】が一番正確だな」


 バラバラじゃん、この3人。


「んだと!? やるかてめぇ!? きっしょいサイコマッドサイエンティストが!」

「ほう? その長い舌が尻から出るように改造してやろうか、蛮族よ?」

「あ、争いはよくないです~!」


 ゼノモーフ型「是野ぜの」とドクター型「ひじり」がバチバチな雰囲気。

 そして、それを止めようとするグレイ型「入江」。


(うん、フツーに怖い)


 怖いよ。

 だって自慢じゃないが俺は虫すら触れないようなビビリだ。

 そんな俺の目の前にいるのが……。


 ゼノモーフ型。

 いわゆる「THE・エイリアン」タイプの是野ぜのは、見た目ですでにおっかない。

 舌長い。牙ザクザク。後頭部長い。甲殻類系なのに全身謎汁でヌメヌメしてる。

 それで口悪くて喧嘩っ早い模様。

 普通に怖い。死。


 ドクター型。

 いわゆる「ソウルジェム系魔法少女アニメの魔女」みたいなひじり

 まずデカい。身長180くらいある。で、全身真っ黒でなんかクレヨンで塗ったみたいに全身ボヤけてる。得体が知れない根源的恐怖を感じる。

 ってかなんだよ、「舌がケツから出るように改造」って。

 発想がこえ~よ。死。


 んで、グレイ型。

 いわゆる一般的に想像されている「宇宙人」そのままの姿の入江。

 お前さぁ、一番小さくて銀色で表情も読めないのにさぁ、オロオロ仲裁しててさぁ……なんか、ちょっと可愛い。

 ただ銀色メタリックな肌が生理的にちょっと、いや、圧倒的にムリだけど……。


 という3人。

 うん、とりあえずこいつらのイニシアチブを取らないと死ぬな……俺。

 ということで俺が仕切っていこう、こいつらを。

 頑張れ、俺。


「あ~、わかった! じゃあ今後、俺のことは名前で呼ぶこと! いい!?」


 とりあえず呼称を統合、っと。


「わかりました、アマツキくん」

「OK、ソラ!」

「『貴様』でもいいか?」


 結局バラバラじゃん……。

 っていうか『貴様』ってなんだよ……。


「はぁ……。まぁ、謎呼称で呼ばれるよりはマシか……。よし! じゃあ次はちゃんと俺に状況を説明する! 喧嘩しないようにな!」

「はぁ~い」


 カモン説明。

 ってことで……。



 【状況説明開始】

 【状況説明され中】

 【是野ぜのひじりが喧嘩中】

 【入江が仲裁中】

 【状況説明され中】

 【状況説明おわり】



 途中喧嘩も挟みつつ、どうにか無事に状況の説明が終わった。

 つまり──。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る