第28話 発見、帰還の手がかり
試合場から見上げた時は気づかなかったけど、すり鉢状の闘技場の最上階には王様御用達の「VIPルーム」なんてものがあったらしい。
で、そこに俺たちは通されたわけで……。
「つまり、決定的な証拠を握るまで、わざとデュオ王子と
「はっはっはっ、さすがソラは察しが早いのう!」
馴れ馴れしく俺のことを「ソラ」と呼ぶようになった元「解説おじさん」ことスターツ王──正式名称「レイヴン・ヴァルク・スターツ王」は、見るからに王様専用な椅子の上で楽しそうに笑った。
その屈託のない無邪気な顔を見て、俺の中でムクムクと反抗心が起き上がる。
「え、じゃあ、馬車が襲われた時も、高台で襲われた時も、ずっと黙って見てたわけですか? 一歩間違えれば死ぬかもしれなかたのに?」
馬車での初戦闘。
高台で飛び降りたロゼッタを助けながらの戦い。
どっちも俺にとってはハラハラな戦いだった。
だから「泳がせてた」なんて言われたら、ちょっと……な。
さすがに一言言わなきゃ気がすまない。
「ふむ……」
ぺちん。
王様が間の抜けた指パッチンをすると、部屋の四隅の天井に4人の黒装束が浮かび上がってきた。
「わっ!」
「【草】じゃ」
「草じゃねぇだろ! いくら日本ナイズされてるからって笑ってんじゃねぇぞ!」
「その草ではない。ほら、言うじゃろ? お抱えの忍びのことを【草】って」
「あっ……」
たしかに言う気がする。
時代劇とかで。
てか、なんで日本人の俺より日本に詳しいんだよ、このおっさん。
「w」の意味の「草」まで知ってるし。
「いざとなったらこいつらが助けるから
「え、じゃあロゼッタが危険になったら……」
「助けるのがこやつらの役目じゃ。ま、ソラたちのお陰で、その手間も省けたのじゃがの」
カラカラと笑うスターツ王。
ん? ちょっと待って?
「俺たちはずっとこの【草】に見張られてたわけ?」
「じゃな」
「みんな気づいてた?」
「なんかいるっぽいとは思ってたけど、敵意は感じなかったから無視してたぜ~」
「うむ、【暗黒森林】たらざる存在は、常に大勢の監視の下にあると言っていい」
「他にあと4人いるよね? 半日ごとに入れ替わって見張ってたもんね~☆」
「え、みんな気づいてたんですか? 私はさっぱり……」
どうやら入江以外は気づいてたっぽい。
「なんだよ……知ってたなら教えてくれれば……」
「教えたら警戒されるだろ? 特にソラは嘘が下手だしな」
サラッと言う
でも……たしかに。
馬鹿だと思ってた
「……あれ?
「うむ、全て知っておるぞ。あっ、トイレと風呂だけは見ておらんぞ? ワシは『コンプライアンス』には厳しいんじゃ。わっはっはっ!」
いやいや、コンプライアンスとかは、もはやどうでもよくて……。
(知られてる? 俺たちが別次元時から来て、
ちょいちょい。
王様が手招きする。
「?」
俺?
横にいる騎士団長のクルスが渋い表情をする。
「はぁ……」
嫌な予感がしつつも、俺は王様の前に進み出た。
もっと、という感じで王様は指ちょんちょん。
耳を近づけると、王様は耳打ちした。
「ワシは、お主らをニホンに返す
!?
マジで!?
いきなり目的達成!?
めちゃめちゃ関係ありそうだった「魔王プレド」とかもなんも関係なく!?
「ただし、それを教えるには一つ条件がある」
え、娘のロゼッタを救ってやったのにケチ。
ま、どのみち俺らが助けなくても、この【草】たちが助けてたんだろうけど。
やもするとそこに居るのに存在を忘れてしまう【草】を一瞥して、俺は王の言葉にに答える。
「聞きましょう」
日本に帰る方法。
喉から手が出るほど知りたい情報。
だけど俺は、がっついてる様子をおくびにも出さず、平静を装って尋ねた。
スターツ王は「うむ……」と一瞬逡巡したあと──こう続けた。
「ロゼッタの──母親を探してほしいのじゃ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます