第27話 1日2回壁走り
子供の頃、ウナギのつかみ取り大会に出たことがある。
手に力を入れれば入れるほど、ウナギはつるりと手から滑り出る。
そんな感じで「天才何でも屋」
「なぜ一人を掴まえられんっ!? 数だ! 数で押し潰せぇ!」
褐色肌の団長っぽい人が叫ぶ。
けど
ガッ! ガガガガッ!
「おいおい……まさか1日に2回も壁面走りを見るとは」
「へぇ、やるじゃん、この世界のやつも」
そんな
「ターゲット変更、第三案──」
キィン──!
が、不発。
褐色の騎士が、その攻撃を盾で受けていた。
「近衛騎士団隊長クルス・アルーム……。やはり貴様がいる限り、王はやれぬか」
「置き土産が来るぞ! 全員防御態勢!」
クルスとやらが号令を出すと兵士たちは寄り合って盾を構え、いくつかの小山となった。
その一瞬、後。
ドゥン────!
爆発。
「ケホケホッ! 自分も生き埋めになるかもしれねぇってのによ!」
「うむ、いわば最終手段、だな」
「爆破を先読みした褐色くんも有能~」
「すぐに反応した兵士さんたちもですね!」
お気楽に実況するエイリアンたち。
反面、実の父親が暗殺されかけたロゼッタを気に掛ける。
「大丈夫です。クルスがいれば父は安心です」
クルス──あの褐色騎士に全幅の信頼を置いてるらしい。
ちょっと嫉妬。
けどまぁ、俺たちの騒ぎの延長でロゼッタのお父さん──解説おじさんとか言って俺たちをからかってたじいさん──が無事ならよかった。
前方の煙が晴れる。
王様は無事。
兵士たちも怪我はないみたい。
すげぇな、あの爆発でけが人なしだなんて。
けど──。
その衝撃と黒煙に紛れ、
姿を、消してしまった。
「申し訳ございません! 賊を逃してしまいました!」
クルスという褐色の騎士が王様に頭を下げる。
が、それは形式上そうしてるだけ、みたいな感じ。
その顔からは、申し訳ないという感情は全く伝わってこない。
まるで、最初から「こうなることが最前の結末」だと想定していたかのよう。
「構わん。元より
その視線の先には、腰を抜かして股の間に水溜りを作っているデュオの姿が。
「ひぃぃ……! パ、パパァ……! ぼ、僕は騙されていただけなんだァ! 何も知らないんだよ! 奴がパパを殺そうとするだなんて……! っていうか僕、僕も狙われたんだッ! だから僕も被害者……」
王は淡々とした口調で応える。
「それはここで弁明する必要もなかろう?」
「王子、しばらく取り調べを受けていただきます。少なくとも数日はお覚悟を」
「ひぃぃ! ぼ、僕に振れるなァ! 貴様らの首なんぞ、僕の命令一つで……」
「お兄様? 私にモンスターをけしかけてきていたのは、お兄様なのですか?」
ロゼッタが俯き、問う。
「ち、違う! それは本当に違うッ! あいつらと関わったのは今回が初めてだ!
「そう、ですか」
狼狽えるデュオと反して、若干ホッとした表情を見せるロゼッタ。
だよな、いくらなんでも「実の兄が命を狙ってた」なんてのが事実だったらショックだもんな。
デュオの野郎は、せいぜいロゼッタの才能と人徳に嫉妬して悪評を流してただけ。
その程度で収まってくれてたほうがロゼッタにとってはいいだろう。
「ではデュオ様、ご同行を」
「離せェ! 貴様らッ、誰の体に触れていると……」
暴れるも、非力なデュオは無慈悲にも屈強な兵士たちに連れて行かれる。
「さて、」
髭の爺さん──スターツ王は、俺の方を向いてこう続けた。
「解説、といこうかの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます