第20話 試合後(みんなからべた褒め)

 勝負に勝った俺を、みんなが出迎える。


「ソラ! やっぱつえぇな、お前! やっぱお前に卵……」

「え~、やばっ! ちょっとカッコよかったんだけど~!?」

「ふむ、急いでその鼻の傷を治そう(アームがちゃがちゃ)」


 是野ぜの、田中さん、ひじりにもみくちゃにされる。


「ちょっ! 苦し……! ひじりもそれ怖いからしまって! てか是野ぜの、『俺に卵』って言ったよね、今!?」

「言ってねぇよ」

「言った! 聞いたから! あんなので卵産み付けらたら俺死ぬからね!?」

「死なないようにするからさ~」

「やっぱ産み付ける気じゃん!」

「え~、いいだろ、ちょっとくらい~」

「よくな~い!」


 そんなこんなで3人の手を振りほどいた俺は、ロゼッタと入江の前に立ち──。


「勝った!」


 と笑顔で報告。

 だって2人のおかげだもん。

 俺が棄権せずに立ち向かえたのは。


「アマツキさん……!」


 ロゼッタが安堵した顔で俺にハグしようとしてくるが。


「うっ……」


 バロムのおっさんと入江に肩を掴まれ止められる。


「姫? 観衆の前です」

「ですよ? ロゼッタさん?」


 バロムのおっさんはわかるが、なぜ入江も? しかも笑顔なのになぜかピキってるし。

 なんて思ってると、デュオ・リンゴ・スターツ──ロゼッタの兄が、関係者席から身を乗り出した。


「な……なァ~んでぇ!? なァ~~~んで負けてんのぉ!? ソー・クヴァック・アニマぁ! 貴様の出禁を解くのに、一体いくらかかったと思ってるんだァ!?」


 デュオは金髪ボブカットを振り乱し、ワナワナと震えている。


「きゃは~! いい気味! ば~~~か☆」

「ふむ、王子であれば、その『金』は国民の納めた血税なのだろうに」

「いぇ~い、馬鹿王子見てる~!?」


 是野ぜのたちがここぞとばかりにデュオを煽りまくる。


「くっ……! ド・ゾマ……! 伯爵ド・ゾマ・シヴァッテールはどこだ!? くそっ、逃げ足の早い……! これだから悦楽に興じる耽廃貴族ヘドニズマーは……!」


 どうやらソー・クヴァック・アニマを出場させた伯爵に逃げられたらしい。

 ま、その伯爵もデュオの子飼いだったんだろう。

 そんで、そのドマゾ伯爵が勝ち上がってたら、2回戦で当たるデュオにわざと負けてたってわけか。

 クソ八百長野郎、だな。


「ぐぅぅぅ! なァ~にが『イーヴァル・エイリアンズ』! 無名の雑魚モンスターのくせしてェェ……ハッ! そうだ……イカサマだな? あいつらイカサマしてる! 絶対になにか……」


 周りの制止を振り切ってデュオは叫ぶ。


「うるさァ~~~い! ……まぁ、いい。次の僕のチームを見て思い知るがいい、愚妹ロゼッタァ。そして思い知れっ! 穢れた血を引く貴様なぞ、この高貴たる僕に絶対に敵うことがないということをなァ!」


 そんな捨て台詞を残して、デュオは姿を消した。


「ほんとにあれがロゼッタの兄ぃ? 全然違いすぎるくね?」

「実は、私の母は誰かわからぬのです……」

「姫っ!」


 諌めるバロムを、ロゼッタが手で制止する。


「いいんです。皆さんには知っておいていただいたほうが。もう、巻き込んでしまっていますし」

「むう……姫がそう言うのであれば……。しかし、もう次の試合が始まります。続きは控室で」

「はい、そうですね」


 バロムのおっさんに促され、俺たちは試合場を後にしようとした、その時。



「入れッ、『アルティメット・デモン・スターツ』!」



 と、司会の声が響いた。

 アルティメット・デモン・スターツ?

 スターツ。

 たしか、この国の名前だ。

 ってことは、オーナーは……?


 やはり。

 入ってきたのは、ホブゴブリン、オーガ、シャーマン、そして──。



 レッドキャップ。



 デュオの言っていたメンバーそのまま。

 デュオのチームだ。

 しかもレッドキャップの顔には──。

 大きな傷が。


「あれは──私達を襲ったレッドキャップです……!」


 なるほど。

 確定、ってわけだ。


 デュオ。


 あいつが。


 これまでロゼッタの命を奪おうとモンスターをけしかけていた──黒幕!

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