12~29 バトル編
第12話 え、私たちが戦うんですか?
『俺が最後まで味方になってやる!』
口説いてるとも誤解されかねないそんなセリフを言口にしたは俺は、なぜか。
なぜか……。
闘技場に、連れてこられていた。
……ホワイ?
殺伐な雰囲気。
壁や床に染み付いた血の匂い。
石壁や石床についた黒いシミが不気味なおばけの顔に見える。
そう、ここは闘技場の控室。
ロゼッタの『もう一箇所だけ、お付き合いいただけますか?』という言葉に従った結果、あれよあれよと言う間にこんなところに連れてこられちゃったよね。
「アマツキ~? 私たちはともかく、弱っちぃあんたが戦ったら死ぬと思うんだけど~?」
低身長型エイリアン田中さんが、俺の頭の上で頬杖ついて寝転がってる。
「おう、戦いなんて無理だぜ! 自慢じゃないが、小学校の時に出た剣道の大会で一回戦負けしたくらいだからな!」
なんて明るく振る舞ってみたけど、逆に空回り感が出て悲しい。
そんな俺にロゼッタが明るく声を掛ける。
「大丈夫ですよ、だって戦うのは主にエイリアンの皆さんですので」
ん? エイリアン?
「どういうこと?」
「はい、これは『モンスターテイムトーナメント』ですので」
んん?
『モンスターテイムトーナメントぉ?』
◇◆ ロゼッタちゃんのモンスターテイムトーナメント(MTT)解説 ◆◇
『モンスターテイムトーナメント』
それは「モンスター+テイマー」の計5人からなる団体戦。
先鋒戦から大将戦まで5試合が行われ、先に3勝先取した方の勝ち。
出場8チームによるトーナメント戦で、優勝したらなんと!
賞品として【王国の領地の一部】がもらえるらしい! 熱い!
賞品が賞品なだけに、参加資格があるのは王族や有力貴族。
そいつらが「オーナー」となって、チームを競わせるのだ。
で、俺たちがロゼッタがオーナーを務める「チーム」ってわけ。
◇◆ 解説おわり ◆◇
「え? え? 私たちが戦うんですか?」
急に話を振られて戸惑う入江。
「はい。エイリアンのみなさんが4人いらっしゃるので、そのうち3人に勝ち抜いていただければ、アマツキさんに出番は回ってこないかと」
5 vs 5の団体戦。
先に3勝した方の勝ち。
うちのエイリアンたちが勝ち続ける限り、俺が戦うことはない。
そういうことらしい。
でも、それって……。
エイリアンたちが負けたら、結局俺が戦う──わけだよね?
「ムリ! 私、戦うとかムリなんだけど~! めんどくさ~い!」
「ウチは別にいいぜ? 相手が誰でも負ける気しねぇ!」
「ふむ、貴様を守るのは我々の使命である以上、いかなる手段をもってしても守ることは守る。が、無闇に自分から危険に飛び込んでいくのは
でも、俺から見てもさぁ、田中さんと入江。
この二人は無理だろ~。
どうみても戦闘タイプじゃないし。
ってことはさ?
エイリアンズが先に試合に出ても、結局2勝2敗で俺まで回ってきちゃうじゃん。
ってことで……。
(断ろう)
いくら俺が惹かれまくってるロゼッタのためとは言っても、「闘技場で戦う」だなんて死に等しい。
死んだらおしまい。
ロゼッタとのいい感じの距離感もなにもなくなってしまう。
っていうかさ?
純粋に俺のことを好いてくれてたわけじゃない、ってことだろ……?
ハナから利用するつもりで近づいてきた?
俺がエイリアン「テイマー」って名乗ったから?
はぁ……。
ってことで、さすがにこれは断るとしよう。
異世界、世知辛いなぁ……。
「え~っと、ロゼッタ? あのさ、申し訳ないんだけど……」
「『レッドキャップがこの大会に出る』という情報を入手しました」
「レッドキャップ?」
「はい」
「レッドキャップって昨日の夜、俺たちを襲ってきた? あの生き残りの?」
「あれと同一個体かどうかはわかりませんが、あのクラスのモンスターはそうそう他にいないかと」
ちょっと待って。
状況を整理しよう。
「レッドキャップは選手で出てる?」
「はい」
「出場するのはモンスター4匹とテイマー1人」
「はい」
「で、そのチームのオーナーが1人いるんだよな?」
「そうです」
「じゃあ、そのレッドキャップが昨日の奴だった場合……」
「はい、私を襲ってきた犯人がわかります」
なるほど。
昨日、ロゼッタと俺たちにモンスターを仕掛けた奴の正体がわかるってことか。
「レッドキャップが出るのがわかってるんだろ? じゃあ、そのチームのオーナーもわかってるんじゃ?」
「いえ、出場選手の情報は試合開始まで伏せられているんです。よって、この控室にも関係者以外は立入禁止。なので『レッドキャップがどこかのチームから出場するらしい』ということしか、今のところはわからなくて……」
なるほど。
ロゼッタが急に闘技場でトーナメントなんて言い出した理由。
ロゼッタを襲い続けてきた真犯人の手がかりがここにあるから。
そういうことか。
「そのレッドキャップが大会に出るって情報はどこから?」
「バロムの諜報のおかげです」
「出場する8チームのオーナーは誰なのかわかってるのか?」
「いえ。でも、おそらく濃厚なのが……」
ロゼッタの言葉の後に、不快~~~~な声が続いた。
「
は?
振り向くと、控室の入口に一人の男が立っていた。
見るからにナルシスト。
見るからに「いけ好かな~い」感じの奇抜なファッションの細身の男。
「……お兄様」
ロゼッタが砂を噛むような表情で言い捨てる。
……ん?
おに……?
あっ、これ、え、ロゼッタの……?
え、ああ……うん、なるほど、そういう……ふ~ん。
この……きっしょい男が──。
ロゼッタの。
お兄様……?
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